『江戸名所図会』で歩く東京~吉原
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
歴史と社会
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政府公認の遊郭として人々の生活を彩った吉原の実態を、『江戸名所図会』や浮世絵から学んでいこう。(全2話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分09秒
収録日:2024年6月5日
追加日:2024年11月18日
≪全文≫

●必ずしも「苦界」ではなかった江戸時代の吉原


―― 皆様こんにちは。

堀口 こんにちは。

―― 本日は堀口茉純先生に、「『江戸名所図会』で歩く東京」ということでお話をいただきたいと思います。堀口先生、どうぞよろしくお願いいたします。

堀口 お願いいたします。

―― いろいろな場所を見てまいりましたけれども、今回はどちらになりますか。

堀口 今回は江戸の遊び場ということで、江戸の遊郭の「吉原」を取り上げたいと思います。

―― 前回は、遊び場で両国を取り上げていただきましたが、今回は吉原ということですね。

堀口 そうですね。

―― 堀口先生で、吉原というと、こちらの『吉原はスゴイ 江戸文化を育んだ魅惑の遊郭』(PHP新書)という本がございます。

堀口 ありがとうございます。

―― 中を見ますと、絵もたくさんで、全編に絵が入っています。

堀口 そうなのですよね。

―― 素晴らしいです。

堀口 川上さんにご苦労していただいて作りました(笑)。

―― いやいや、そんなことないです。私が「この本は素晴らしい」というと内輪になりますが、これは担当編集をさせていただきました。

堀口 本当にいい本を出させていただきました。

―― この素晴らしい1冊がございます。ぜひこちらもお読みいただければと思います。

堀口 はい。

―― 今回は吉原ということでございますね。

堀口 そうなのです。本の中でも書いたのですけれども、遊郭の吉原というと、一般的には、かわいそうな女性たちが閉じ込められて、遊女として過酷な労働を強いられていた悲惨な場所というイメージが強いかと思います。

―― これはよく映画などでも、苦しい世界と書いて「苦界」と言っていたりしますね。

堀口 おっしゃるとおりです。これは江戸時代以降の吉原を舞台に作られた創作作品のイメージが非常に大きいのかなと思っています。たとえば文学作品でいえば『たけくらべ』(樋口一葉 著)ですし、映画でいえば『吉原炎上』(1987年公開、東映映画)などです。これらの作品というのは、本当に名作だと思うのですが、江戸時代の遊郭吉原とは描かれている時代が違うということに注意が必要なのです。

 『たけくらべ』は明治時代の中期ですし、『吉原炎上』は明治末期が舞台になっています。なので、たしかに江戸時代における遊郭吉原では、女性たちが過酷な労働...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(2)ヒトの子育てと脳の関係
チンパンジーは乱婚、ヒトは夫婦…人間の特殊性と複雑性
長谷川眞理子
『江戸名所図会』で歩く東京~上水と十二社(1)「水の都」江戸の上水道
玉川上水の歴史…約8カ月で完成?玉川兄弟の功績とは
堀口茉純
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部