百姓からみた戦国大名~国家の本質
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民衆にとって生命維持装置の役割を果たしていたのは「村」
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戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
黒田基樹(駿河台大学法学部教授/日本史学博士)
戦国時代とはどのような時代だったのか。過去の資料から見るとまず浮かび上がってくるのは、この時代の人々は、季節性に左右された周期的な大飢饉に生存を脅かされていたということである。それゆえ民衆にとっての課題は、常態化した大飢饉においていかに生き延びるのかということであった。(全8話中第1話)
時間:9分49秒
収録日:2019年3月20日
追加日:2019年9月15日
≪全文≫

●戦国時代とはどのような時代だったのか


 駿河台大学の黒田基樹です。今日は「百姓からみた戦国大名」というタイトルで、当時戦国大名から支配を受けていた村や百姓の視点に立つと、戦国大名はどのような存在であったのかということについて、お話しします。

 まず、そもそも戦国という時代はどのような時代だったのでしょうか。ここに資料があります。これは、本土寺過去帳と呼ばれるものから作ったグラフです。本土寺というのは、当時の関東地方にあったお寺です。過去帳というのは基本的には檀家の供養をするための名簿です。

 この本土寺過去帳は、15世紀から16世紀にかけての記載が残っている、非常に珍しい資料です。その中で、何年にどれほど人が死んだのかについて年次ごとに集計したものが、この図1です。

 これを見ると分かるのは、年によって死者数に違いがあるということです。特に前後の年と比べて著しく死者数が多い部分について、丸を付けてあります。

 最初に大きく出てくるのが正長元(1428)年です。この年は、「正長の土一揆」といって、日本で初めて土一揆という民衆による蜂起が起きました。実は当時の記録を見ると、この年には大飢饉が起きていたということが分かっています。

 それから次に大きく死者数が高くなっているのが、文明4(1472)年あたりです。ここでも前後の年と比べても非常に多くの死者が出ています。この年も当時の記録で大飢饉が起きていたということが分かっています。

 さらにもう一つ挙げると、永正2(1505)年です。これも当時の記録によると、大飢饉があったと言うことが分かっています。そのことから、年次ごとの死者の数は当時の飢饉と呼ばれる状況に非常に左右されていることが分かります。

 次に、図2を見ていただきたいと思います。これは今取り上げた本土寺過去帳から、15世紀と16世紀における死者について、月別に集計したグラフです。右側のものが1月ごとに集計したもの。左側のものは2月を1つにまとめてグラフ化したものです。より特徴が分かるよう、こうした作為が加えられています。

 これは旧暦なので、大体ひと月からひと月半プラスすると、現在の季節感に合います。このグラフを見ると、1年の前半までが平均を上回っており、1年の後半である7月(今で...

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