百姓からみた戦国大名~国家の本質
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羽柴秀吉の天下統一から始まった戦国社会の克服
百姓からみた戦国大名~国家の本質(8)戦国社会の克服
黒田基樹(駿河台大学法学部教授/日本史学博士)
戦国社会はいかにして克服されたのだろうか。何よりもまず注目すべきは、慢性的飢饉による生産資源をめぐる戦争が、羽柴秀吉の天下統一によって停止されたことである。その後、17世紀に入り、江戸幕府や諸国の大名が構造改革を進めていく。そうして、戦争が起こらない環境がつくり出され、飢饉の際には大名による公的な融資が確立していった。(全8話中第8話)
時間:11分57秒
収録日:2019年3月20日
追加日:2019年11月6日
≪全文≫

●共同負担による公共事業の萌芽


 戦国大名と村との関係の変化についてもう一つ取り上げたいのが、共同負担による公共事業の萌芽です。1573年以降の天正年間には、それまで戦争負担のために各村に賦課をしていた大普請役が、広域的な治水事業に転用されていきました。大普請役は、軍事施設である城郭の維持修築のために充てられる労働力負担だったのですが、それが公共事業に転用されていったのです。

 それまで、公共事業は受益者負担でした。基本的には利用し、それによって便宜を受ける人がお金を払って人を雇い、工事を行っていました。しかし、この時期になると、そうした公共事業に、戦争負担が転用されていったのです。

 大河川の治水事業は、その流域の村々にとって受益があるものです。しかし、その負担は流域を問わず、領国の村全ての共同負担になりました。要するに、その流域に関係ない村の労働力が投入されるようになったのです。これが意味するのは、領国が村にとって1つの政治共同体の機能を果たすようになったということです。治水事業は村々の存立にとって重要な工事であり、それまでは受益者である村々の負担によって行われていました。しかし、それに対し、戦争費用である税金が投入されることが、この戦国時代から一般的になっていきました。


●村が帰属する政治共同体として大名領国が確立していった


 江戸時代の近世大名は戦争をしません。そのため、近世大名も普請役を各村から徴発していました。本拠の城郭普請は行われていましたが、それ以外の部分は基本的には治水事業に充てられるようになっていきます。要するに、本来は戦争費用のために徴発されていた租税が、基本的には村の存立のための公共事業に適用されていき、それが江戸時代には一般化していったのです。これも、戦国時代から始まりました。先ほど述べた通り、戦国大名が村の成り立ちのために対応していく中で、つくり出されたものです。

 村の存立のための必要な部分が、領国の村々の共同負担によって実現されていくことで、領国そのものが村にとっての一つの政治共同体としての機能を果たすようになりました。要するに、村が帰属すべき政治共同体として、大名領国を認識したのです。そのことを裏付ける現象が、公共事業の共同負担であるといえます。


●戦国社会の克服への課題は村同士の戦争の抑止


 最後に、こうし...

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