ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
もはや定義できないハイブリッド戦争、多様化と進化の現実
第2話へ進む
オウンゴールも!?ロシアにとって許しがたいNATO拡大の背景
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
廣瀬陽子(慶應義塾大学総合政策学部教授)
長期化の様相を呈しているロシア・ウクライナ戦争。ウクライナに対してロシアが仕掛けているのは、多角的な手段を用いた「ハイブリッド戦争」である。それはいったいどのような戦略なのか。本シリーズ講義では、まずはこの戦争の全体像を把握するため、ロシアの勢力圏構想とNATO拡大の背景、また、なぜロシアがウクライナを重要視するのかについて解説する。(全7話中第1話)
時間:15分27秒
収録日:2024年7月25日
追加日:2024年9月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●「ハイブリッド戦争」におけるロシアの継戦能力を読み解く


 本日「ウクライナ戦争とロシアのハイブリッド戦争~ロシアを支える旧ソ連諸国」ということで話をさせていただきたいと思います。

 ウクライナ戦争の非常に象徴的なものがロシアのハイブリッド戦争ということになりますが、その実態を明らかにしつつ、ロシアが継戦能力を維持できている背景について、今日はお話をしていきたいと思います。

 そこで明らかになりますのが、「持てるもの」であるロシアの順応力の強さです。そして中国やBRICSなどの友好国ですとか、世界で死角になっていると思われる旧ソ連諸国がいかにロシアを支えているかです。このような関係がいろいろなロシアの継戦能力を読み解く鍵となってくるということもお話ししたいと思います。

 特に旧ソ連諸国の状況というのは、日本ではあまり語られることがないわけですけれど、実は私は、昨年(2023年)から今年(2024年)にかけて旧ソ連諸国6カ国を回っています。各地の専門家が、ウクライナ戦争は旧ソ連全体を見なければ分からないとおっしゃっていまして、まさに私もそのように思っている次第です。そのような、メディアなどでもなかなか触れられないウクライナ戦争の裏側を、今日はお話ししていきたいと思っております。


●ロシアの勢力圏構想とNATOの存在


 まずロシアの全体像を考える上で非常に重要なのが、ロシアの勢力圏構想ということになります。今、世界で勢力圏を元に外交をしているのは中国とロシアのみといわれているわけなのですけれど、ロシアの勢力圏というのは、第一義的には旧ソ連諸国、近い外国ということになります。近い外国というのは、まさに旧ソ連諸国の領域なわけなのですけれど、ロシアは今でも自分たちの非常に重要な勢力圏であり、ほぼ国の一部と考えている状況にあります。

 特にKGBの後継組織であるFSB(Federal Security Service of the Russian Federation。ロシア連邦の情報・治安機関)というのは、国内問題を扱う組織になっているわけなのですけれど、なんとこのFSBの対象としている地域というのは、ロシアのみならず、旧ソ連地域も入っているということになります。

 そして第二義的には旧共産圏と新領域ということになりまして、ソ連時代に旧共産圏で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規