ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
もはや定義できないハイブリッド戦争、多様化と進化の現実
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(2)ハイブリッド戦争とは何か
廣瀬陽子(慶應義塾大学総合政策学部教授)
ロシアのウクライナへの侵攻は、多様な手段を組み合わせた「ハイブリッド戦争」だといわれる。ではハイブリッド戦争とは何か。多様化と進化を続けるこの戦争を定義することは難しいという現実があるが、イメージとして3つのフェーズを提示する廣瀬氏。今回はその中でまず「フェーズ1」について、ロシアによる「ハイブリッド戦争」の実態を交えながら解説する。(全7話中第2話)
時間:12分13秒
収録日:2024年7月25日
追加日:2024年9月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●「ハイブリッド戦争」は定義できない


 そういう中で、ロシアがずっと展開してきたのが「ハイブリッド戦争」というものになります。ハイブリッド戦争というのは、政治的目的を達成するために、軍事的脅迫と、それ以外のさまざまな手段を組み合わせた、非正規戦と正規戦を組み合わせた戦争の手法と定義ができます。

 そのようなハイブリッド戦争は、いろいろ多くの展開が起きており、決して凝り固まった概念では考えられないものなのです。ですので、ハイブリッド戦争の定義が問題になるわけなのですけれど、私はこの『ハイブリッド戦争―ロシアの新しい国家戦略』(講談社新書)という本は2021年に出しているのですが、あえて定義というものをしておらず、実際、私は定義ができないという立場を取っています。私から見ますと、「定義ができる」ということをおっしゃっている方は、実際に現場をご存じない方なのだという意識を持っております。

 実際に、例えばNATOのハイブリッド戦争の専門家などと議論をしても、ハイブリッド戦争の定義ができるとおっしゃっている方はどなたもいらっしゃらないのです。というのは、日々、ハイブリッド戦争の手段というのは多様化、そして進化しています。変に定義をしてしまいますと、これ以上はハイブリッド戦争というような意識で身構えることになり、新たな転換についていけないのです。

 なので、定義はあえてしない。そして、さまざまな新たな展開に対抗していくべきだというのが私の立場になります。

 実際に、2021年にこの本を出したわけなのですが、新たなハイブリッド戦争の手段、展開が次々に生まれている。それが現実なのです。


●正規戦と非正規戦が合わさったハイブリッド戦争


 実際にこのハイブリッド戦争は、非常に分かりづらいものになっておりますので、少しでも分かりやすくと思って作りましたのが、このイメージ図になります。

 このベクトルが左右に分かれておりまして、左に行けば行くほど非正規戦的な手段、右に行けば行くほど正規戦的な手段ということになっておりますけれど、この烈度が上がるごとにフェーズは上がっていくというイメージをつくっております。

 このフェーズ1に当たるところというのが、戦争という概念ではなかなか捉えられないような...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ