「中華民族の偉大な復興」と中国外交
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
四字熟語で見る中国外交の変化
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
小原雅博(東京大学名誉教授)
現在、中国が世界における影響力や存在感を強めている。大国となった中国の外交は、どのような変化を経て、何を目指しているのだろうか。中国外交の特徴と変化を5つの四字熟語から解き明かす。(全4話中第1話)
時間:12分32秒
収録日:2019年4月4日
追加日:2019年5月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●四字熟語で見る中国外交の変化


 皆さん、こんにちは。このシリーズでは、「中華民族の偉大な復興」といわれるほど台頭している中国の外交について、論じていきたいと思います。現在、アメリカが衰えを見せて自国第一主義に走る中、「大復興」する中国が世界での影響力や存在感を強めています。そのような中国の外交は、どう変化し、何を目指しているのでしょうか。

 第1回(前編と後編に分けて)は、そのような中国外交の特徴を、中国特有の四字熟語によって解説していきます。文化大革命後に政治の中央舞台にカム・バックして改革・開放への大転換を成し遂げた鄧小平の時代から、今日の習近平国家主席の時代まで、中国外交の在り方は内外環境の変化を背景に大きく変化してきました。

 この変化を時系列に沿って整理すれば、「韜光養晦(とうこうようかい)」、「平和発展」、「積極有所作為」、「核心利益」、「奮発有為」、この5つがキーワードになります。これらの熟語は、中国の外交姿勢の変化を表すとともに、中国のパワーの変化を反映するものです。


●「韜光養晦、有所作為」


 最初に、「韜光養晦、有所作為」という熟語を見てみましょう。まず「韜光」とは、外に現れる能力(「光」)を隠す(「韜」)ことを意味します。また「養晦」とは、月のない夜(「晦」)に修養する(「養」)ことを意味しています。これは、鄧小平が始めた経済の改革と開放に専念して、力を蓄え、時を待ちながら、「有所作為」をする、すなわち、できることを少しだけやる、そういう方針を示しています。つまり、国力が劣勢なうちは紛争を避け、他国との摩擦や対立を減らそうとする。国際社会の警戒感を招かないように、対外的に目立たず、低姿勢を保ち、専ら国力の回復と増進に努める。それが天安門事件後における鄧小平の戦略でした。あるいは戦術といった方が良いかもしれません。

 鄧小平は1992年に、「韜光養晦をもう何年か続けることで、初めて比較的大きな政治的力を持つことができ、国際社会での発言力も違ったものとなるであろう」と述べ、「韜光養晦」という路線を続けることを指示しています。その後の中国はこの鄧小平の指示を守り、経済建設に専念しました。そこでは、年率10パーセントを超える高い成長を続け、90年代末には、東南アジア諸国の強力な輸出競争相手となります。

 韜光養晦の下における中国の経済...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ