「中華民族の偉大な復興」と中国外交
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「核心利益」と「奮発有為」から解き明かす中国の外交姿勢
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(2)外交姿勢・後編
小原雅博(東京大学名誉教授)
前回に引き続き、中国外交の特徴とその変化を、四字熟語から解き明かす。今回は、「核心利益」と「奮発有為」という2つから、大国となった中国の外交姿勢を明らかにする。(全4話中第2話)
時間:13分24秒
収録日:2019年4月4日
追加日:2019年5月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●「核心利益」の提示


 中国共産党は、巨大国家の安定と経済の発展を維持していく上で、さまざまな難題を抱えてきました。その中でも最も大きな問題の1つが、少数民族問題です。それは1つ間違えば、中国の領土の一体性を突き崩す一撃にもなりかねません。2008年にはチベット自治区で、2009年には新疆ウイグル自治区で暴動が起き、胡錦濤指導部はその収拾に追われました。そして、中国の発展を望まずその分裂を画策する国外の勢力が、その背後に存在するという警戒感を強めます。

 外交においても、「台独」すなわち台湾の独立、「藏独」すなわちチベットの独立、「疆独(きょうどく)」すなわち新疆の独立、こうした勢力との闘争に奉仕することを求められます。胡錦濤国家主席は、「外交工作は、国家主権、安全、発展利益に奉仕すべきだ」と強調し、交渉の余地のない「核心利益」が中国外交の前面に登場するのです。

 2009年、戴秉国(たいへいこく)国務委員は、1.中国の国家体制や政治体制、2.主権の安全、領土の一体性、国家の統一、3.中国経済の持続的発展の保障、これらを「核心利益」と位置付け、これを侵すことは許さないと強調しました。このように、中国の核心利益は、中国が警戒する脅威の裏返しであって、中国の脅威認識を色濃く反映しているといえます。1の中国の国家体制や政治体制には中国共産党が敏感になり、2の主権の安全、領土の一体性、国家の統一にはナショナリズムを帯びた世論が反発します。

 内政と外交が一体化する時代にあって、国内に火種を抱えながら経済成長を維持していく必要がある中国の指導者にとって、中国のボトム・ラインを「核心利益」として提示して予防線を張ることが、「内外を総攬する」上で必要とされたのです。

 2009年11月のバラク・オバマ大統領訪中時の共同声明には、「核心利益を互いに尊重する」という文言が盛り込まれました。これはアメリカ国内の批判を招き、2011年1月の胡錦濤国家主席訪米時の共同声明においては、「核心利益」という言葉は盛り込まれませんでした。そこでは、「主権と領土保全を尊重する」という表現に落ち着いたのです。


●「核心利益」の再定義


 この2011年に中国は、「平和発展白書」を発表しています。その中では7つの「核心利益」が提示されました。1つ目は国家主権、2つ目は国家安全、3つ目は領土保全、4つ目は国家統一、5つ目は中...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦