アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点となっているトランプ主義を中心に、経済と政治の両面からの変化を探っていく。第1話は「ラストベルトをつくったのは誰か」ということで、雇用が失われたアメリカの労働者たちを生み出した背景について解説する。(全7話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
内側から見たアメリカと日本
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
2.偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
2025年11月11日配信予定
3.「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
2025年11月17日配信予定
4.ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
2025年11月18日配信予定
4.ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
2025年11月18日配信予定
5.タイトル未定
2025年11月24日配信予定
6.タイトル未定
2025年11月25日配信予定
7.タイトル未定
2100年1月1日配信予定
時間:11分57秒
収録日:2025年9月2日
追加日:2025年11月10日
収録日:2025年9月2日
追加日:2025年11月10日
≪全文≫
●先の見えない「ラストベルト」の労働者たちに響いたトランプの言葉
―― 今日はどうもありがとうございます。
島田 どうぞよろしくお願いします。
―― これだけの短期間に、これだけ長文のレジュメを作っていただいて、ありがとうございます。この中でまず最初に聞きたいのが、先生の書かれた「Rust Beltをつくったのは誰か」という章です。非常に面白かったですね。
島田 そうですか。
―― そのあたりの解説から入っていただいてよろしいでしょうか。
島田 全然いいですよ。“Rust Belt”という言い方は、皆さんよくご存じだと思いますが、“Rust”というのは「錆びる」という意味ですね。
―― はい。
島田 それは工場街のことで、いい時代にはピッカピカの自動車工場や鉄鋼工場が生産活動をしていたけれど、あるときから錆が目立ち出した。もう工場が機能していないのです。それがどのあたりかというと、五大湖周辺の相当広い地域です。そこには鉄工所がいくつもあって、自動車工場もたくさんあって、デトロイトなどもその一つです。そこがラストベルトになってしまった。
そこで働いている労働者の仕事がない。あったとしてもすごい低賃金です。そのような、本当に先がないという状況があったのですが、そこの票をかき集めて大統領になったのが第1次政権のときのトランプ氏なのです。
トランプ氏は第1次政権を獲得する1年前までは共和党員ではなかった。ですから…。
―― すごい話ですね。
島田 そうです。共和党員になったときの対抗馬はヒラリー・クリントン氏でしたが、そのときに、スティーブ・バノンという男が彼のアドバイザーになった。彼はハーバード(大)出身のかなりシャープな男です。彼がトランプ氏をずっと見ていて、「おやじさん、やれるよ」「ヒラリー・クリントンなら、おやじさんなら勝てるよ」と言った。
どういうことかというと、ヒラリー氏はものすごく有能な女性ですから当然、女性初の大統領になるだろうとアメリカ中が期待していた。ところが、ヒラリーについてはこういう言い方がありました。“Limousine candidate”(リムジン・キャンディデート)という言い方です。「Limousine」というのは、高級な大型のキャデラックのリムジンのことで、それで演説会場に乗り付ける。乗り付ける前には、自家用機で近くの空港に降りています。
なぜ、クリントン家はそん...
●先の見えない「ラストベルト」の労働者たちに響いたトランプの言葉
―― 今日はどうもありがとうございます。
島田 どうぞよろしくお願いします。
―― これだけの短期間に、これだけ長文のレジュメを作っていただいて、ありがとうございます。この中でまず最初に聞きたいのが、先生の書かれた「Rust Beltをつくったのは誰か」という章です。非常に面白かったですね。
島田 そうですか。
―― そのあたりの解説から入っていただいてよろしいでしょうか。
島田 全然いいですよ。“Rust Belt”という言い方は、皆さんよくご存じだと思いますが、“Rust”というのは「錆びる」という意味ですね。
―― はい。
島田 それは工場街のことで、いい時代にはピッカピカの自動車工場や鉄鋼工場が生産活動をしていたけれど、あるときから錆が目立ち出した。もう工場が機能していないのです。それがどのあたりかというと、五大湖周辺の相当広い地域です。そこには鉄工所がいくつもあって、自動車工場もたくさんあって、デトロイトなどもその一つです。そこがラストベルトになってしまった。
そこで働いている労働者の仕事がない。あったとしてもすごい低賃金です。そのような、本当に先がないという状況があったのですが、そこの票をかき集めて大統領になったのが第1次政権のときのトランプ氏なのです。
トランプ氏は第1次政権を獲得する1年前までは共和党員ではなかった。ですから…。
―― すごい話ですね。
島田 そうです。共和党員になったときの対抗馬はヒラリー・クリントン氏でしたが、そのときに、スティーブ・バノンという男が彼のアドバイザーになった。彼はハーバード(大)出身のかなりシャープな男です。彼がトランプ氏をずっと見ていて、「おやじさん、やれるよ」「ヒラリー・クリントンなら、おやじさんなら勝てるよ」と言った。
どういうことかというと、ヒラリー氏はものすごく有能な女性ですから当然、女性初の大統領になるだろうとアメリカ中が期待していた。ところが、ヒラリーについてはこういう言い方がありました。“Limousine candidate”(リムジン・キャンディデート)という言い方です。「Limousine」というのは、高級な大型のキャデラックのリムジンのことで、それで演説会場に乗り付ける。乗り付ける前には、自家用機で近くの空港に降りています。
なぜ、クリントン家はそん...
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
人気の講義ランキングTOP10
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部