10年の修行で自我を手放し宇宙と一体化する境地に達すると、自分中心からホリスティックな視点に変わり、物事の表と裏の共通点が見えてきて、その本質がつかめるという田口氏。人生は常に新たな命題を解き明かし続ける旅である。最終回となる今回は、質疑応答形式で進みながら、禅の体験を通して深い歓喜や本質の洞察が得られたことについて論じていただく。(全6話中第6話)
※質問者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●宇宙と一体化したときの感動の歓喜
【質問】
これまでのお話で禅の体験について、青空が見え、喜びを感じたという話がありました。その禅について、先生のご体験から考えたとき、今日の主題でもある宇宙と人間の関係について、どのように分かってくるのでしょうか。あるいはどう結びつくのでしょうか。
田口 人間が最終的に自分をなくしていく行為なのです。それで、10年間ぐらいかかって自分をなくしていったわけです。そうすると、どんどん青空に類するもの、つまり青空と言っているのが宇宙です。その宇宙と一体になっていくわけです。そうなった瞬間に歓喜、喜びを感じる。この喜びというものは、宇宙から来る感動そのものなのです。それを言いたいのです。
ですから、そういう意味で、「ああ、きれいな景色だなあ」というのも、それから、何かを一生懸命作って、こんなに作物がたくさんできたというのも、全部そういうものは感動なのです。感動の歓喜というものが、宇宙との一体化を表しているといっていいのです。
【質問】
宇宙と一体になる感動を味わったとき、人間の判断はどのように変わるのでしょうか。
田口 基本的に、自分中心から、先ほどのホリスティック、ホーリーに変わって、全体が見えるようになる。無理をして全体を見なければならないというより、自分はこのような視野を持っていたのだなというくらいに、全体を見ている自分がいるというように、視点が変わってくるわけです。ですから、自分で自分が不思議に思えるようになり、視野が広がっているのが分かると、そういうところも気になるようになるということです。
●物事の表と裏の共通点が見えれば本質が分かる
【質問】
自分の目の前ではなく、もっと上のほうにということですか。
田口 もっともっと、違うところから全体を見ているようなものです。それから、全体というのは先ほどから言っているように、表側は全体ではなく、裏側も見て全体なのだということに気づくわけです。ですから、物事の表側だけ見ているのではないか、裏側はどうなっているのかと、しっかり裏側も見ていくと、そういう視点が開けてきて、総体が見られるということです。
そして、裏側から見ると、文様から何から、形態から、表と全然違うわけです。同じものとは思えないぐらいに違う。しかし、同じものです。ですから、同じものも表側か...