宇宙や人生の本質について考察を深めていく今回の講義。前回に続く、宇宙がもう1つの宇宙のような存在をつくりたくて人間を創造したという話は非常に興味深い。陰陽(陰と陽)の両面を理解し、自然の摂理に根差した東洋思想を深く知ることが、人間としての在り方を導く鍵である。そして、人生が自分に期待しているという真理は、生きる力と希望を与えてくれる。(全6話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
≪全文≫
●裏表を見なければ全体は見えない
田口 私は、まるで宇宙は人間のようだなと思いました。それで1つの段階を上がったわけです。ところがよく考えてみると、そうではないのです。宇宙が、宇宙のような存在をつくりたくて人間をつくったのだと。反対なのだということが見えてくると、裏表両方が見えたという感じになるわけです。
── やはり裏を見ないと(いけないわけですね)。
田口 全体を見るというのは、そういう意味です。裏表を見なければなりません。
── やはり、無私といったときに、肉体を置き去りにしてはいけないわけですね。
田口 ですから、全て拒否してはいけないのです。つまり陰陽は、陰があって陽がある、陽があって陰があるわけで、片方を拒否した瞬間に自分が成り立たなくなるのです。要するに、対立はしているけれど、相待あるいは相補という関係なのです、全てが。そして、全体を見ないといけないわけです。
やはり、陰陽というものにも、すごく意味合いがあるのです。そのように見ていくということが大切で、何でも後ろがあるということなのです。
── しかし、陰陽はよくできていますね。
●「人生が自分に期待している」という言葉
田口 陰陽がよくできているというのは、そもそもは自然の観察、摂理の観察ですから、自然摂理の観察から来ているわけです。自然にはこういう摂理があるということを知ったということではないでしょうか。そういうものが東洋思想です。東洋思想というのは自然摂理を説明しているものなのです。そういう意味で、陰陽と東洋思想を知る必要があるのです。
ですから、根源を知ることのエネルギーの補給というか、根源にはものすごいエネルギーがあるわけです。それがよく分かってきたということではないでしょうか。
私が若いときのことですが、高島博先生という人が心理学者のヴィクトール・フランクルに会いに行きました。そのとき、フランクルに「君が東洋人として初めて私を理解してくれた」と言わしめた人です。その高島先生に、若い頃、2回セラピーでお世話になりました。18歳のときと、大けがした後の25歳のとき、セラピーを2回受けたのです。
そこで高島先生に聞いたフランクルの話で、「人生に期待を持たなければいけないというけれど、あれは人生のほうが期待しているという意味だ」と。「自分が人生に期待しているのではない...