もののあはれと日本の道徳・倫理
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
板東洋介(東京大学大学院人文社会系研究科 准教授)
『源氏物語』の本質は「もののあはれ」の一点に集約できると論じた18世紀の思想家・本居宣長。また、宣長はその「もののあはれ」こそが、日本人の道徳・倫理を基礎づけているとも指摘している。それはいったいどういうことなのか。今回は本居宣長の「もののあはれ」論としてまず「もののあはれ」とは何かということを踏まえながら、そこへの共感と倫理について解説していく。(全4話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:7分37秒
収録日:2023年8月4日
追加日:2024年1月18日
≪全文≫

●「もののあはれ」とは何か


―― 皆さま、こんにちは。本日は板東洋介先生に「もののあはれと日本の道徳・倫理」というテーマでお話をいただきたいと思っております。板東先生、どうぞよろしくお願いいたします。

板東 よろしくお願いいたします。

―― 板東先生には、この前の講義といたしまして「『源氏物語』ともののあはれ」という講義をいただきました。今度はその「もののあはれ」という、本居宣長が提示した考えというのが、いかに日本人の道徳、倫理というものを、ある意味ではうまく汲み取っているということになるのか、それを知るといかに日本人の道徳観、倫理観が分かりやすくなるかというところがあるかと思うので、そのあたりのお話をぜひいただきたいと思います。

 最初に、前回の『源氏物語』の講義を見た方にはやや復習になりますけれども、「もののあはれ」とは何かというところでお話をいただければと思います。先生のイラスト解説からお願いできますでしょうか。

板東 はい。「もののあはれ」といいますのは、18世紀の思想家・本居宣長が、特に30代くらいに日本の文学、和歌、物語などの全ての精神はこの「もののあはれ」というひと言に尽きるのだという形で提唱した人間論、情念論です。

 宣長が説明する「もののあはれ」というのは、要するに人間であれ、あらゆる生き物であれ、特に人間ですけれども、外界のいろいろな対象に心を動かされるわけです。

 例えば、イラストでご覧いただくと、美しい花だなとか、美しい人だなという形で、それが憧れの思いであったりとか、あるいは美的な感動であったりとか、ここでは肯定的で好ましいものだけを挙げましたけれども、なんとおぞましいことであろうとか、なんと腹立たしいことであろうというのも含めて、いろいろな感動を与えられます。それが「ああ」というため息になる。それが「あはれ」であるという説明です。

 だから、「あはれ」というのは、現代語では感情というべきなのか、あるいはため息という口から漏れる、思わず何か外界の対象に心を動かされて漏れるため息というべきなのか、少し微妙なところがありますが、さしあたりは、要するに外界のものに動かされた感動であると理解してよろしいかと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新