危機のデモクラシー…公共哲学から考える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
どのような経済レジームを選ぶか…倫理資本主義の可能性
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(6)政治と経済をつなぐ公共哲学
齋藤純一(早稲田大学政治経済学術院政治経済学部教授)
政治と経済を、いかに公共哲学が架橋していけるのか。政治と経済、それぞれの理想を毀損しない形で互いが共存できるあり方はあるのだろうか。動機付け、公正、共通善といったキーワードをもとに考えていく。(全6話中第6話)
時間:12分28秒
収録日:2024年9月11日
追加日:2025年5月2日
≪全文≫

●「共感」や「環境設計」からの動機付け


 これが最後の論点になります。(以前に)政治と経済を公共哲学がどのように架橋しているのか、あるいは架橋できるのかというご質問をいただきました。

 今回、3つほど挙げますけれど、いろいろと接点がございます。例えばわれわれは、先ほど(第5話で)いった「狭い意味での合理性」だけに動機付けられているわけではないのだ。複数の動機付けを持っているのだ、という話です。

 このこと(=複数の動機付けを持っていること)を強調したのは、(ノーベル経済学賞を受賞した)アマルティア・センですけれど、センの議論は、政治哲学にとっても非常に大きいものです。彼は共感(シンパシー)、コミットメントといった動機付けも私たちは持っているのだとしました。自分の効用が下がるとしてもボイコットをするとか、アボカドが好きだけれど、南アフリカで作られたアボカドは食べないとか。これは私が挙げている例ではなくて、センが言っている例です。反功利的な行動も私たちはあえて行ったりするということだったりします。

 あるいはアーキテクチャーです。環境の設計を通して、私たちの行動を動かしていく。意識にアピールするのではなくて、実際に物理的な環境――アーキテクチャーといいます――によって人々の行動を方向付けていくということです。「ナッジ」といいますが、「ああせえ、こうせえ」と言うのではなくて、「こっちのほうに行ったほうがいいよ」という形で人々の行動をある方向に促していく。行動経済学と接点があるわけですが、そういうアーキテクチャーの議論とか、さまざまな接点はあります。


●「アドバンテージ」の再生産をいかに公正にするか


 (ということで)今回、3つほど(お話しします)。1つはフェアネス、公正という価値は政治においても、経済においても非常に重要な価値です。経済のほうでも公正取引委員会があり、市場が独占・寡占の状態に固定化しないよう、新規参入が可能な仕方でスペースを空けていく。そういう(フェアな)競争が可能になるようなゲームといっていいのでしょうか、競い合いの場にならなければいけない。私たちはそういう制度を持っています。

 これは何かというと、政治においても、経済においても、不当なアドバンテージ、不当なディスアドバンテージ、値しない不利、値...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ