危機のデモクラシー…公共哲学から考える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ハンナ・アーレントが追及した「政治における嘘」の問題
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(4)アーレントの公共性論
齋藤純一(早稲田大学政治経済学術院政治経済学部教授)
ユダヤ人の女性哲学者ハンナ・アーレントは、ナチス政権下ドイツの状況から公共性の本質について思考した。他者から切り離され、孤立した存在としての「大衆」が生み出す全体主義に対して、アーレントが示した公共性論とは。複数性、政治における嘘と虚偽などをキーワードに、彼女の議論から引き出し得るアイデアについて解説する。(全6話中第4話)
時間:13分14秒
収録日:2024年9月11日
追加日:2025年4月18日
≪全文≫

●センセーショナルだった『エルサレムのアイヒマン』


 3番目のトピックは、ハンナ・アーレントが公共性についてどう考えていたかです。これも(重要なところを)ピックアップしてお話しいたします。

 彼女をご存じの方は多いかと思います。映画にもなりました。ユダヤ人の女性で、1933年、ヒトラーが(ドイツを)全権掌握するのを機に亡命します。フランスで一時、抑留収容所に入れられたこともありますが、難民として長い間、生きざるを得なかった。1951年になってアメリカの市民権を獲得できます。

 私は昔から(およそ)半世紀近くくらい読んでいると思うのですが、いまだに人気に陰りは見えません。新しい本も次々に現れています。それだけ魅力がある思想家だと思います。映画などもご覧いただければいいと思います。

 『エルサレムのアイヒマン』という、アイヒマン裁判のレポートを(アーレントは)世に送ったわけです(1963年)、『ニューヨーカー』という雑誌を通じて。

 アドルフ・アイヒマンというのは(ナチスの)親衛隊中佐ですが、ユダヤ人などの移送に対して責任を負っていた親衛隊の官僚がエルサレムで裁判にかけられました。(そのアイヒマンについてアーレントが書いた)レポートがユダヤ人共同体に対する批判も含んでいたということで、ジューイッシュ・コミュニティ(ユダヤ人共同体)からかなり総スカン状態に遭ったりします。

 でも彼女は、「私は何らかのアイデンティティにおいて、自分の思考とか判断を制約したりはしない。女性だからとか、ユダヤ人だからとか、そういうアイデンティティにおいて考えたり、判断したりはしない」という応答をしています。


●「大衆」の特徴は「他から切り離されていること」


 アーレントの同時代は、もはや公衆に信頼を託せる時代ではありませんでした。公衆(ザ・パブリック)から大衆(ザ・マス)に時代の主役は変わっているということです。これは他にも『大衆の反逆』を書いたオルテガ・イ・ガセットであったり、『孤独な群衆』を書いたデイヴィッド・リースマンであったりと、同時代にはさまざまな大衆論があります。

 アーレントが大衆の特徴をどこに見ているかというと、「他から切り離されていること」です。他とのコミュニケーションから疎外されてしまっている。孤立している。さらに...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
躍進するインドIT産業の可能性と課題(1)下請けから世界の中心へ
インドが世界有数のIT産業の拠点へと発展した理由
島田晴雄
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(26)お盆とあの世を考える
【10min解説】特集で考える《お盆とあの世》の本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
日本の財政の真実を検証する(7)AIと長寿化&質疑応答
AI時代にこそ「熟達者の経験」が生きる&現状の日本経済の実情は
宮本弘曉
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(1)なぜ『神国日本』なのか?
ラフカディオ・ハーンが解明した「美しい日本」の秘密と未来
賴住光子
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(3)共産軍を殲滅――金門島での戦い
共産軍2万を金門島で殲滅…ただし一般人の命を守る軍人の本義を重視
門田隆将
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)ChatGPT生みの親の半生
OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか
桑原晃弥
資本主義の再定義…哲学で考える(2)今の時代の人間観と共生
「共生」の本当の意味とは?…人間はHuman Co-becoming
中島隆博
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎