墨子に学ぶ「防衛」の神髄
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『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
古代中国で500年以上続いた春秋戦国時代には、さまざまな思想や軍略を掲げる思想家も群雄割拠した。その中で儒家とともに群を抜いていたのが「非戦・非攻」を主張した墨家である。秦の始皇帝以来、歴史の影に隠れていた『墨子』の記述から、現在の国家防衛を考えるためのヒントを探してみよう。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:11分52秒
収録日:2021年12月23日
追加日:2022年5月11日
≪全文≫

●優れた国家防衛論として読める『墨子』


田口 私が今日お話をしたいと思うのは、国防とはどういうものかを考える上で役立つ古典についてです。いろいろ読んでみた中に『墨子』というものがありますが、ご存じですか。

―― はい、名前だけは。

田口 この『墨子』という書を読んでみると、実に優れた国家防衛論になっています。

 時代背景を少し申し上げると、諸子百家(が活躍した春秋戦国時代にさかのぼります)。諸子百家の中で一番隆盛を極めたのは当然儒家(儒教)ですが、墨家はこれに並ぶ二大勢力だったといいます。

 「百家」というのは、たくさんという意味で「百」が付いているものと思われがちですが、実はそうではありません。漢の時代の歴史書である『漢書』に、正確に数えた「189家」という数が出ています。

 189もの独自思想を持った人間が諸国を経めぐり、「私の論法でいきなさい」「私の論法なら勝てる」「私の論法に従えば、国家は富国強兵で発展する」と言い競っていました。その189の中の二大トップとして、儒家と墨家があったのです。

―― なるほど。


●春秋戦国時代に「非戦・非攻」を主張


田口 それほどの存在だった墨家なのですが、彼らは謎めいていました。なぜかというと、秦の始皇帝の頃になると影も形もなくなってしまっていたからです。一体、これは何だったのか。

―― なるほど。始皇帝の時に、もうなくなってしまうのですね。

田口 そう、もうすでに途絶えていました。だから、(墨家・墨子についての)中国の研究家も細々としかいないぐらいでした。ところが、清の時代になって非常に優秀な研究家が何人か出て、墨家をまた発掘してくれました。だから、現在のわれわれがこうして読めるわけです。

 (『墨子』の著者は)墨テキという人ですが、氏素性もよく分かっておらず、「墨」は入墨のことだといわれています。このような姓だったということは、それほど高い位の人ではなかったのでしょう。相当底辺から出てきて、自分の主張を思想として苦労しながらまとめて『墨子』を著し、「墨家」を形成した人なのだろうとうかがえます。

―― なるほど。

田口 しからば、彼はどういうことを説いたのか。当時の中国は群雄割拠の混戦状態が500年間続いていたわけですが、その真っ只中で「非戦・非攻」を主張したのです。

―― 春秋戦国時代ですから、それは素...

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