●その状況に潜む危険は何かを考える
次に行きます。「軍行に険阻・潢井(こうせい)・葭葦(かい)・山林・蘙薈(えいわい)有れば、必ず謹んで之を覆索せよ」です。もう1つの注意は、いろんな地形には状況があって、まず険阻というのは非常に厳しいところです。断崖絶壁であったり、それこそ細いわずかな道を行かなければいけないとか、そういう厳しい地形が険阻です。
潢井というのは水が溜まっているような(ところです。)井(せい)というのはそもそも井戸ですから、そういう窪地がずっと続いているような、なかなか行きづらいところです。(葭葦はそのようなところに生えているアシです。)それから山林もそうですね。山の林の中というのは身動きが取りにくいものです。
それから、蘙薈というのは草木の密生地で、とかく足を取られやすいというようなところです。そして、こういうところでは必ず何をしなければいけないのかということで、覆索という言葉が出てきます。これは探索をしろということです。では何を探索しなければいけないのかというのが、次にあります。
「此れ伏姦(ふくかん)の處(お)る所」なのです。伏姦は何かというと、待ち伏せの兵ということです。ですから、誘い込まれているのかもしれないと、こういうところに出会ったら注意すべきで、自分で自主的に行っているつもりが、敵の思う壺になっているのかもしれないと考えたらいいと思います。このように、まず伏姦がいるかもしれないわけです。
これを経営孫子からいえば、まず競合がマーケットのシェアをもっと取りたいというので、競合している自社に向けていろんな戦略を仕掛けてくることの1つなのかもしれないと、そのように考えてもいいでしょう。それから人生でいえば、これは自分の人生を破滅のほうへ向かわせるような、そういう悪の誘いかもしれないと考えることも大切で、人生はいろいろあります。そういうものかどうかをよく見定めたほうがいいということです。
●不確実な要素で勝敗が決する場合は回避する
そして、「敵近くして静かなるは」ですが、これは、敵が近いという情報が間者からどんどん来ているにもかかわらず、先行きを見るとシーンとしているということです。さらに、「其の険を恃むなり」で、要するに厳しい地形だから敵もにっちもさっちも行かず、ただシーン...