●相手の内憂を突く逆転の発想
あらん限りの力をもって、不利を有利にする必要があります。卑近な例をいえば、日露戦争はなぜ勝ったのかという例なども重要です。非常に重要な側面として、やはり明石元二郎大佐の活動というものがあります。ロシアという国と小国日本がまともに戦ったら、どう見ても負けるに違いないわけです。そのときにロシアは内憂の最たるものを持っていました。それは何かというと、やはり労働革命です。労働革命という内憂がどんどん起これば起こるほど、日本にとっては援軍が来るようなものです。そこに目をつけたのが明石大佐です。
彼がやったことは何かというと、ロシアの中で起きた労働革命の支援をいろんな形でがんがんやったわけです。したがって、ロシア国内では労働革命がどんどん起こり、こちらで戦争などやっている場合ではなくなりました。しかし、仕掛けてきているわけですから、なんとか戦わなければなりません。でも、国のほとんどが労働革命となり、やがてこれが本当の革命になるわけですが、それを何しろ対処しなければならず、片手間で戦争をするというような状況に仕立て上げたというのも、これは明石大佐の大変な活躍があったからです。そういうことなのです。
このように、敵や競合企業などの内憂というものをどんどん促進させてしまうということもとても重要なことです。
それがここにある「迂直の計」で、遅れても有利になるというようなことなのです。この不利を有利にするというのが戦略論ですが、そういうものの実例をたくさん頭に入れておいてください。これは非常に重要です。
●戦争を利のために行うと途端に危険になる
その次、「故に軍争は利の爲にせば、軍争は危爲<た>り」です。これはとんでもないことを言っています。要するに、闘争、軍争、軍の争いは、利のために行うと途端に危険になると言っているのです。何を言っているだと。利というは有利、勝利のことですが、そのために戦うものではないのですか、ということをいっているのです。ここが孫子の兵法がそんじょそこらにある戦略論とひと味違うところなのです。このようなアドバイスはそんなにはありません。戦争を有利にするため、勝利するためだけに、などと思ってやってはいけないと言われたら、何と答えればいいでしょうか。では、なぜなのかという...