『孫子』を読む:軍争篇
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
勝利は二の次!?…利を考えない「孫子の兵法」の妙
『孫子』を読む:軍争篇(2)勝利を考えない戦略論
田口佳史(東洋思想研究家)
「闘争を利のために行うと危険になる」――一見矛盾するこの教えこそ一味違う「孫子の兵法」の戦略論だと田口氏は言う。利とは有利、勝利のことで、普通ならそのために戦うものだと考えられるが、それは考えないほうがいいという。いったいどういうことなのか。不利を有利に逆転させるための戦略論として、日露戦争での日本の勝利の陰で大きな功績を挙げた明石元二郎大佐の話とともに解説する。(全5話中第2話)
時間:9分33秒
収録日:2020年6月16日
追加日:2023年11月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●相手の内憂を突く逆転の発想


 あらん限りの力をもって、不利を有利にする必要があります。卑近な例をいえば、日露戦争はなぜ勝ったのかという例なども重要です。非常に重要な側面として、やはり明石元二郎大佐の活動というものがあります。ロシアという国と小国日本がまともに戦ったら、どう見ても負けるに違いないわけです。そのときにロシアは内憂の最たるものを持っていました。それは何かというと、やはり労働革命です。労働革命という内憂がどんどん起これば起こるほど、日本にとっては援軍が来るようなものです。そこに目をつけたのが明石大佐です。

 彼がやったことは何かというと、ロシアの中で起きた労働革命の支援をいろんな形でがんがんやったわけです。したがって、ロシア国内では労働革命がどんどん起こり、こちらで戦争などやっている場合ではなくなりました。しかし、仕掛けてきているわけですから、なんとか戦わなければなりません。でも、国のほとんどが労働革命となり、やがてこれが本当の革命になるわけですが、それを何しろ対処しなければならず、片手間で戦争をするというような状況に仕立て上げたというのも、これは明石大佐の大変な活躍があったからです。そういうことなのです。

 このように、敵や競合企業などの内憂というものをどんどん促進させてしまうということもとても重要なことです。

 それがここにある「迂直の計」で、遅れても有利になるというようなことなのです。この不利を有利にするというのが戦略論ですが、そういうものの実例をたくさん頭に入れておいてください。これは非常に重要です。


●戦争を利のために行うと途端に危険になる


 その次、「故に軍争は利の爲にせば、軍争は危爲<た>り」です。これはとんでもないことを言っています。要するに、闘争、軍争、軍の争いは、利のために行うと途端に危険になると言っているのです。何を言っているだと。利というは有利、勝利のことですが、そのために戦うものではないのですか、ということをいっているのです。ここが孫子の兵法がそんじょそこらにある戦略論とひと味違うところなのです。このようなアドバイスはそんなにはありません。戦争を有利にするため、勝利するためだけに、などと思ってやってはいけないと言われたら、何と答えればいいでしょうか。では、なぜなのかという...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福(1)曖昧になった日本人の「自然」
小林秀雄から福田和也まで、日本の文芸批評史を俯瞰する
浜崎洋介
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(序)『ばけばけ』と『神国日本』
ラフカディオ・ハーンの遺著『神国日本』の深い意義とは?
賴住光子
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ

人気の講義ランキングTOP10
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(6)オープンダイアローグと過程の重視
治さないと治る!?オープンダイアローグは逆説でできている
斎藤環
日本の財政の真実を検証する(1)膨らむ借金の知られざる実態
日本の財政の「真実」をデータで徹底検証…国際機関の分析は?
宮本弘曉
編集部ラジオ2026(20)W杯に想う聖徳太子の「和」の力
【10minで考える】W杯と聖徳太子流・勝利への「和の力」の真実
テンミニッツ・アカデミー編集部
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(7)自分の人生のために
AI時代こそAIでなく「生きた学び」で自分の人生を膨らませる
橋爪大三郎
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
聖徳太子「十七条憲法」を読む(5)条文を読む…和と議論
議論で和を実現せよ、怒りと執着を捨て凡夫の自覚を持て
賴住光子
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
幸福な老年への智恵をキケロに学ぶ…惨めな老年の4つの理由とは
本村凌二
ギリシア神話の基本を知る(1)「ゼウス以前」の神々の戦い
ギリシア神話…ゼウスの「父親殺し」とオリュンポス十二神
鎌田東二
老子の神髄(2)達人の境地と「無為」
無為とは「絶対なる喜びを得る」こと…その境地こそ長寿への秘訣
田口佳史