『孫子』を読む:軍争篇
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
気をつけろ!強行軍、第三の敵、毒まんじゅう…
『孫子』を読む:軍争篇(3)強行軍の法則と第三の敵
田口佳史(東洋思想研究家)
「強行軍の法則」というものがある。無理をして日夜休まず行くと、全軍バラバラになってしまい、すると敵の虜になることにつながっていく。もう一つ肝に銘じなければいけないのは、「第三の敵」の存在である。目の前の敵ばかりに注意を払うのではなく、第三者の軍隊のことも意識しておく必要がある。第二次世界大戦で日本が劣勢の時にソ連が参戦してきたが、その教訓を忘れてはいけない。(全5話中第3話)
時間:9分24秒
収録日:2020年6月16日
追加日:2023年12月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●強行軍の法則――日夜休まず行くと全軍バラバラに


 そして「是の故に甲を卷きて趨<はし>り、日夜処らず、道を倍して兼行し、百里にして利を爭へば、則ち三將軍を擒<とりこ>にす」です。前に、輜重を捨てる、人も置いてきぼりにしてしまうとありましたが、もっとひどいのは、「早く早く」と言われても、重装備では行けませんので、「甲を巻く」というのは、どうしても装備を置いて、ひどいときにはそれを抜いて、手で持って走るしかないわけです。

 ですから、「甲を卷きて趨り、日夜処らず」は、日夜休まず行くということで、「道を倍して兼行し」というのは、倍の速度で行くということですから、そうすると100里もの距離をその状態で行った瞬間に、「三將軍を擒<とりこ>にす」とありますが、三将軍というのは、一番先に行っている先方軍がいて、その次に中を行く軍がいて、それから後軍の一番後、前・中・後というのが三軍でその三将軍のことです。そのまず全軍がバラバラ行くわけですから、敵からすれば全軍嵩にかかってどーっと来るのではなく、それもみんな走ってきて疲れ果て、ハーハー言っているような軍隊が来るので、敵にとっては簡単です。

 要するに、そのことを言っているのです。それは勝利のためにやる、有利のためにやるわけですが、そのようなものを当面の目標にしたら、全軍バラバラになってしまう。いってみれば、三将軍が捕虜になる、虜になるのです。

 そして「勁<つよ>き者は先んじ」というように、足が速くて肉体的に勝っている者は先に行ってしまうし、(「疲るる者は後れ」で、)弱い者はどうしても遅れる。さらに「其の法十が一にして至ればなり」ですが、つまり全軍の10分の1しか行くことができないということです。

 次が「五十里にして利を爭へば、則ち上將軍をたおす」で、一番先に着いて周りを見渡せば部下は誰も来ていない、将軍が1人でいる、という状況ですから、敵からすれば「待ってました」ということです。

 そして「其の法半ば至ればなり」というように、今度は半分しか行くことができず、これが「強行軍の法則」というものです。さらに「三十里にして利を爭へば、則ち三分の二至る」は、3分の2しか到達することはできないということです。


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄