●18年間のアメリカ禅修行はどう始まったか
―― 皆さま、こんにちは。本日は藤田一照先生に「禅と仏教の心」についてお話をいただきたいと思っています。藤田先生、どうぞよろしくお願いいたします。
藤田 よろしくお願いします。
―― 今回は禅のお話ということですが、禅をたしなむような経験のない(禅をやったことがない)一般の人からすると、どういうイメージを持てばいいのかというところがあります。しかし、藤田先生が大変分かりやすいご本をお書きになっていて、こちらに 『現代坐禅講義──只管打坐への道』(KADOKAWA)という本と 『ブッダが教える愉快な生き方』(NHK出版)という本があります。
特にこちら(『ブッダが教える愉快な生き方』) の本は、非常に簡潔に書かれていますが奥が深く、ゴーダマ・シッダールタ(ブッダ)の生涯を解説しつつ概説しつつ、仏教とはどういうものかというお話が書かれた、大変印象深い本でした。 このあたりのことも含めて、お聞きしたいと思います。
まず藤田先生は大学を卒業後、博士課程まで進まれた後に大学院を中退されて、禅に入門されています。そして、その後アメリカで18年。
藤田 そうですね。まず、日本で禅の道場に入って6年間修行しました。私はずっと続けるつもりだったのですが、師匠から「おまえの先輩が建てた小さな坐禅堂が、アメリカの東海岸の雑木林の中にあるから、そこに行って修行を続けろ」と言われた。私が計画していたことではないのですが、そういうお誘いというか指示があったので行ったら、結果的に18年ぐらいそこにいることになってしまったということです。
●アメリカ人の禅への関心とアメリカにおける禅の歴史
―― 一般に海外の方は、日本について「禅」を一つのイメージとして持たれる場合も多いということですし、先生が(地元の方と)一緒にアメリカで禅をされたということで、かなり関心も高かったのだろうと思いますが。
藤田 そうですね。アメリカの仏教にも歴史は結構あって、100年以上ぐらいになると思います。最初のころは鈴木大拙さんという方がおられ、本を通して「禅の悟りはこういうものだ」「悟った人は、このような振る舞いをし、こういう考え方をしている人だ」ということをアメリカの人たちに伝えました。 それが1950年代ぐらいで、鈴木大拙の本を手に取るような知的レベルの高い人たちが、まず興味...