禅とは何か~禅と仏教の心
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禅に「神秘体験」を求めるのは自分中心の物欲しさの根性
禅とは何か~禅と仏教の心(3)菩提達磨と問いの禅
藤田一照(曹洞宗僧侶)
仏教には「今ないものを欲しがり、今より向上しよう」とする人間の根本的構造に間違いがあるという認識がある。中でも特に実践が主体の禅はそのことに厳しい。それは第一ボタンのようなもので、掛け違えると最後にいくらがんばっても帳尻が合わない。だから、禅の始祖・菩提達磨に弟子入りするため臂を切断した逸話のように、第一ボタンまでさかのぼる覚悟が禅の修行には要求される。答えではなく問いが返ってくるのが禅なのだ。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分25秒
収録日:2024年8月9日
追加日:2025年1月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●仏教に逆行する「今ないもの」への欲望と行動


―― (最初の2回で)歴史や歩みについてうかがったところで、いよいよ「禅とは何か」にいきたいと思います。

 先の話で、先生から非常に印象深い言葉がありました。「悟りというのは神秘的な体験などではなく、自分の生きる道が定まるということ」というお話でした。一般の人は、禅をする=坐禅を組むことで、何か神秘的な体験がやってくるのではないか(と思われている)。悟りというのは、イメージもできないけれどとてつもない何かに出会えるような…。

藤田 「いいもの」だと。

―― 境地ということですね。それをめざしてやるものなのか、それが修行なのか。そう先生が問われた通りのイメージを持っている人も多いと思いますが、これは違うのですか。

藤田 違うと思いますね。だいたいそういうのは「物欲しさの根性」ではないですか。

―― そうですね(笑)。

藤田 「これさえあれば、僕は素晴らしくなる、もっとマシになる、悩みがなくなる」というようなのは、みな「僕が」ということが前に出ています。この「僕が」が問題なわけです。多くの場合、私たちは何か学ぼうとかしようと思うときに、それは「この自分の得になるから」という意識がある。

 もちろんそれは「お腹いっぱいになる」とか「女の人にもてる」といった俗っぽいものではないかもしれません。もう少し高尚なものを求める心かもしれませんが、それでもやはり「今はないものを欲しがっている」ことに変わりはありません。

 「今ないものを欲しがり、それを目標として、何かいい方法を学び、欲しいものを手に入れて喜ぶ」という構造には変わりがない。そして、仏教の中には、そういう構造自体が人間の大きな問題だという認識があるのです。


●第一ボタンを掛け違えると、がんばっても帳尻が合わない


藤田 中でも特に禅はそれを問題にしていると私は思っています。だから、この構造自体をいったん停止するというか、そうではない生き方をすることが課題なわけです。

 でも、私たちはきちんと学んでいないかぎり、この構造自体を疑うことは普通ほとんどない、吟味することもないから、全てをこの構造の中で考えています。だから、皆さんは一所懸命、坐禅したり修行されたりしていますが、「修行すると何が手に入るのですか」というようなことを質問する人が多いわけです。

...

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