禅とは何か~禅と仏教の心
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「私が世界で、世界が私」…禅で体感する「縁起」の感覚
禅とは何か~禅と仏教の心(4)与格への変容と関係論的世界観
藤田一照(曹洞宗僧侶)
欲望を軸とした根本構造の誤りに気づいて坐禅を組んでいると、私が主格から与格へ変容するという。私へのとらわれがなくなると、仏教の大きな教えである「縁起」のしくみもおのずと判然する。それは全てが関係の網の目の中で起きる「関係論的世界観」であり、世界はバラバラの個の集合ではないということだ。(全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分13秒
収録日:2024年8月9日
追加日:2025年2月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●「私」を主格から与格へ変容させる


藤田 私たちは普通、全部自分を「主語」にして考えています。それは文法用語で「主格」といわれるもので、「私が」という、SVOのSです。

 しかし坐禅では、例えば「私が坐禅している」では坐禅になっていない。「私が走っている」「私が飯を食っている」のと同じ構造のことをやっているだけなので、そこには何の反転もないわけです。

 坐禅というのは、「主格」としてそれまでずっと生きてきた私、今も(主格として)生きている私が、廃ってしまうことです。私が廃ってしまうのは、私が消えるのではありません。私は「主格」ではなく、「与格」になる。

 この「与格」は、日本語では「私に」というふうに表現されます。坐禅は、主格であった私が与格になっていると、今は表現しています。

 例えば「私が呼吸している」では、私が主格になっています。このように「ス~、ハァ~、ス~、ハァ~」するとか、いろいろな呼吸法があります。これは、私が呼吸法を自分の体で起きている呼吸に当てはめようとしているわけですから、私が主格になっています。坐禅の呼吸は、まったくの自然呼吸で、身体に任せて呼吸しているので、私は与格になる。「私は呼吸が起きる場所になっている」「私に呼吸が起きている」という具合です。

 だから「私」というのを使うのですが、「主格の私」が「与格の私」に反転または変容してしまっているわけで、この変容というのが修行の大事なところです。

 箒(ほうき)で掃くときも、「俺が箒を使って(掃除を)やっている」のではなく、その状況の中で箒はこうしていて、「箒の一部として私がやっている」という少し変な言い方になるわけです。言葉の使い方としては変になる。なぜかというと、言葉というのは、私を主格にして「ああだ、こうだ」を言う。言ったり考えたりするのは、言葉がそのためにつくられたからですが、言葉を使って「私」が与格になったときの様子を表現しようとすると、変な表現になる。「呼吸が私に起きている」というように言わなくてはいけませんし。

 でも、そういう表現(が世界に)はあるらしくて、例えば「風邪をひく」というのも「風邪が私にやってきて、留まっている」というような表現をする言語があるらしいのです。怒るときも、「私は怒っている」と言いますが、私は好きで怒っているわけではなく、怒らされてい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦