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これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人

楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
アラン
人間が悲観的になるのは、ある意味で非常に自然なことである。しかし、新しい世の中をつくるためには、まず楽観的であることが重要である。「楽観主義者の未来予測」にも通じる小宮山宏氏が見据える21世紀後半のエネルギーの状況とは? そしてイノベーション創出のためになすべきこととは?
時間:13:48
収録日:2014/12/18
追加日:2015/01/01
≪全文≫

●悲観主義は人間にとって非常に自然だが、楽観主義は人間の意志である


小宮山 面白い言葉があります。“Pessimism is nature, Optimism is will”という言葉です。

―― それはいい言葉ですね。

小宮山 いい言葉です。東大の先生などにはそういう人も多いのですが、ペシミズム・悲観主義というのは、人間にとって非常に自然なことなのです。しかし、オプティミズム・楽観主義というのは、やはり人間の意志なのです。ですから、僕はそういう意志を持った人たちが、新しい世の中をつくるような気がします。

―― バブルが崩壊した1989年をピークにして、95年くらいまで何となく過ぎて、その後ずっとピークが来ていないではないですか。今の20代、30代の人たちは、いい目に遭ったことがなく、それなりに人生に悩んでいる人が多いと思います。まさに、今の“Pessimism is nature, Optimism is will”で、彼らに向けたメッセージをお願いできればと思います。


●エネルギーがいくらでもある時代が21世紀後半にやって来る


小宮山 僕はずっと前からこう考えていました。今、エネルギーは一番苦しい時代です。温暖化があり、資源の問題があり、おまけに原子力の問題まで抱えてしまいましたからね。今、人類も一番苦しいし、特に日本は苦しいという時代です。しかし、21世紀の後半に入ってきたら、エネルギーなどいくらでもあるという時代が来ると、僕は本当に思っています。

 例えば、僕の家は12年前に太陽電池を積みましたが、僕個人としては、もうペイバックできました。あとは丸もうけです。1年に15万円ぐらいのもうけになります。それで、あと8年経って20年目になると、約束が切れますから、買ってくれなくなりますね。ということは、電力会社もそこでペイバックがおしまいです。負担ゼロになります。しかし、その先も太陽電池は、ずっと電力を生むのです。

―― 使えるわけですよね。

小宮山 そういうものが今、粛々と動き始めているわけです。そうすると、2050年にどうなるか、考えてみたらいいのです。減価償却が終わり、タダになった再生可能エネルギーが本当に動く。しかも、コストはどんどん下がってきています。もの自体が本当に安くなるわけですから。ですから、おそらく、クリーンで安全な有り余る再生可能エネルギーによって、電気飛行機が飛ぶでしょう。大学レベルですけど、電気飛行機はもうすでにできています。4人乗りの飛行機を九州大学の研究室でつくっています。

―― すごいですね、先生。

小宮山 僕は、そういう時代が本当に来ると思っています。


●「楽観主義者の未来予測」は決して荒唐無稽ではない


小宮山 ところが、もっと体系的にそのようなことを言った本があるのです。2008年、カリフォルニアに「シンギュラリティ・ユニバーシティ」という教育機関が創設されました。

―― 新しい学校ですね。

小宮山 「シンギュラリティ」とは、数学で言う「特異点」のことです。

―― 特異点。

小宮山 あなたは数学を勉強していないから、全然分からないだろうと思うけれども、特異点とは、次第に技術が伸びてきたのが、途中まで来ると、一気に伸びて行くというものです。

―― ブレイク・スルーですね。

小宮山 そうです。そういう意味で、シンギュラリティと言っているのですが、その教育機関の創設者が数年の研究成果の本を出したのです。これが“Abundance”という題目です。「豊富」ということですかね。

―― 「豊富」ですか。

小宮山 「豊富」「豊か」という題です。それで副題が、“The Future Is Better Than You Think”といいます。

―― それ、すごいですね。元気になるタイトルですね。

小宮山 その本が、実はつい最近、日本語に訳されたのです。熊谷玲美さんという訳者の方が訳したのですが、この人が訳した題目がすごいのです。「楽観主義者の未来予測」というのです。

―― それは、立派な意訳ですね。

小宮山 ものすごい意訳です。だけど、よく表しています。ですから、もともとの原題“Abundance: The Future Is Better Than You Think”と「楽観主義者の未来予測」、この二つはとてもよく内容を表しています。

 これはどのようなことかというと、マズローの欲求5段階説をご存知でしょう。あれは、食欲など人間の本能的な欲望、動物としての欲望から、だんだんとそういうものが満たされると高い欲望になって、最後は自己実現が人間にとって一番の目標になるという話です。それを考えてはいるのですが、人間の必要とする、人間の欲望を実現するものは何であるかということを、マズローの5段階を、ざっと3段階ぐらいに短くして、分かりやすくした視点で説明しています。一番下にあるのが、水と食料と住居・家です。

―― 生存欲求ですね。

小宮山 それから、その上にあるのが、...
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