●発想や思考のクセを捨てる「アンラーン」
―― 皆さま、こんにちは。本日はこれから「大人の学び 発展しつづける人生のために」ということで、柳川(範之)先生と為末(大)さんにお話をいただいてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
柳川先生、為末さん、本日はまさに「大人の学びフェス」という催しですので、ぜひ学びを二つの観点から考えてまいりたいと思っています。一つは学びをいかに広げるのかという要素です。もう一つは、学びをいかに深めるのかというところでお話をお聞きできればと思っています。
ちょうど両先生がこちらの──皆さんお持ちでしょうか──『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』(柳川範之著、為末大著、日経BP)という本の中で「アンラーン」という概念を提起されています。「learn」に否定の「un」が付くというところから入るわけですが、まずはこの「アンラーン」が学びを広げていくのに大事な概念かと思われるので、この点からお聞きできればと思っています。
それでは最初に柳川先生、アンラーンをどう考えるべきかということについてはいかがでしょうか。
柳川 ありがとうございます。今、ご紹介いただきましたように、アンラーンというと、「learn」に「un」が付くので学ばないことなのか、というご質問をよく受けますが、これは決してそうではありません。今日の皆さんは「大人の学び」に関心があって来られていると思いますが、これはしっかりした学びをするための、ある種の重要なステップではないかということで、為末さんとまとめた次第です。
どういうことかというと、いろいろなことを学んでくる中で、発想や思考にはずいぶんクセがついている。クセがついていると、新しいインプットをしても、素通りしてしまうようなことが起こる。そこで、今まで身につけてきた発想や思考のクセ、あるいは考え方のパターンのようなことを一旦解きほぐしてみる。そうすると、結果として、新しいインプットをしたときに、それがしっかり頭に入っていくということです。この点については、後でもう少し具体的なお話をしたいと思っています。
●競技引退の節目で気づいた「変える」力
―― ありがとうございます。続きまして為末さん。今の「アンラーン」の考え方について少し具体的な補足をいただくと、どのようになるでしょうか。
為末 そうです...