最終話では、金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅を読み解いていく。鎌田氏は、この2つの曼荼羅は「粒子性」と「波動性」だという。そして空海は、この2つの曼荼羅や『秘蔵宝鑰』の冒頭の詩を通じて「命は光なのだ」ということを明示していたのである。がんを患いながら「ガン遊詩人」と称して精力的に活動してこられた鎌田東二氏は2025年5月30日にご逝去され、この鼎談の最後に語っていた続編は叶わぬかたちとなってしまった。だが、あらゆる課題や問題を「数珠つなぎ」にしていく空海のすごさは、これからの社会への大きな問題提起となるのである。(全6話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●胎蔵生(胎蔵界)曼荼羅と金剛界曼荼羅を読み解く
鎌田 そして、「曼荼羅」を述べて終わりにします。実はその曼荼羅もオン・オフで、ある種二元化したのですけれど、これも方便として二元化しています。さらに2つの見方として、いわゆる胎蔵生(胎蔵界)曼荼羅、金剛界曼荼羅といわれるものです。
金剛界曼荼羅のほうが分かりやすいので、そちらからいいますと、9つの世界ブロックを持っています。真ん中が成身会(じょうしんえ)で、ここに向かって上昇していくと。それに対して、真ん中に全てのブッダにつながっている、大日如来の智拳印を結んだ、胎蔵界曼荼羅、胎蔵生曼荼羅があります。
これは量子力学でいうところの、粒子性と波動性だと私は捉えます。どちらが波動性かというと、胎蔵界が波動性です。なぜならば、ここで起こった一瞬の波は全部に波及します、瞬時に。インドラネットみたいなものです、もう全てが。全てに変化をもたらします。
胎蔵界はそういう世界で、母親が持っている子どもに対する直感とか、いろんな意味で、特に母と子の関係性、胎蔵という言葉があるように、もう瞬時にして、その子どもの状態と反応しますよね、ほぼ心身一如的に。こういう世界が波動の世界なので、分割できないというか、粒子のような形です。
ところが、金剛界のほうは、完全に1つ1つの(グリッドなのです。ちなみに、)パワーグリッドのグリッドというのは、条理ですか。こういう状態、柵みたいな、枠みたいな、条理。
長谷川 条と理と。
鎌田 要するに京都の道みたいな、ああいうものをグリッドというのですか。
岡本 そうですね。
鎌田 そういう言い方もありますね。
岡本 はい。
鎌田 つまり、これはグリッドなのですよね。
岡本 確かに。格子みたいなものですね。
鎌田 格子です。そして格子というのは、格子の中にはまったら、確実にその中で生きられるということなのです。でも、格子の中に生きるというのは、例えば吉原です。吉原は1つの条理ですけれど、あの中でいえば、蔦重(蔦屋重三郎)のようなメディア王に、うまくいったらなれるかもしれないけれど、でもその中でしかできないこともあった。その中で、それを生かしてメディア王に成り上がったわけです。
この世界(金剛界曼荼羅の世界)も条理なの...