プラトン『ポリテイア(国家)』を読む
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
アテナイから下って…プラトンは冒頭部に何を仕掛けたか?
第2話へ進む
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
日本では戦後、『国家』というタイトルで親しまれてきたプラトンの『ポリテイア』。実はこの書物は、現在もアメリカトップ10の大学生の必読書として、最も読まれている本だという。日本では『国家』という邦題のせいもあって、国家論や政治論の書だと思われがちだが、実はプラトンが「正義のあり方」や、「魂の構造や宇宙の構造も含めた社会のあり方」を解き明かすために、全力を傾けた代表作なのである。この書に書かれた有名なイデア論や哲人政治論などの議論は、現在社会を考える上でも、多くの刺激に満ちている。一方、全体主義の起源などとして批判的に論じられることのある「史上最大の問題作」でもある。納富信留氏は、この本を何度も読めば、「自分自身が変わり」「よりよい生き方を送っていく」こともできるという。はたして、どのようなことか。(全16話中第1話)
時間:15分33秒
収録日:2022年7月8日
追加日:2022年11月17日
≪全文≫

●欧米で「ベスト1」に推される哲学書


 これから、「プラトン『ポリテイア』を読む」の講座を始めます。第1回は「史上最大の問題作」というタイトルでお話しいたします。

 プラトンの対話篇『ポリテイア』は、日本では通常『国家』というタイトルで通用しています。この本についてお話しするに当たり、最初にこの本がどれぐらい重要で、どれぐらい注目されているかということについて、枕のような形でお話しします。

 2001年にイギリスの新聞「ガーディアン」では、哲学の専門家を中心に大々的な調査を行い、これまで書かれた哲学書の中で何が一番重要かという、いわば人気投票を行いました。その結果、1位がこのプラトンの『ポリテイア』(The Republic)という本でした。少し前のデータですが、イギリスを中心とするヨーロッパの学者の方々がこれまでに書かれた哲学書の中で最も重要な著作と認定したということです。

 ちなみに2位はカントの『純粋理性批判』(The Critique of Pure Reason)、3位にチャールズ・ダーウィンの『種の起源』(The Origin of Species)。その他、デカルト、ヒューム、ニーチェ、アリストテレスといった人たちが入っています。その中で堂々と1位を取ったプラトンの『ポリテイア』という本は、なぜそんなに重要だと思われているのか。この講座を通じて、それを考えていきたいと思います。

 また最近、全米トップ10の大学で、学生対象のようですが「一番読んでいる本は何か」という調査が行われました。統計上のトップはやはりプラトンの『ポリテイア』ということでした。ハーバードやMIT、スタンフォードなど、アメリカでトップの大学の学生たちの間で、おそらく文理を問わず一番読まれている、読まなくてはいけないと思われているのが、この本だということになっています。2番がホッブズの『リヴァイアサン』、3番がマキアヴェリ、4番がハンチントンという感じで、こちらは哲学に限らずさまざまな分野の本が入っているリストになっています。


●「全てのこと」を扱っている本


 著者のプラトンは、皆さんご存じの古代ギリシアの哲学者で、紀元前5世紀から4世紀にかけて活躍した、アテナイの出身者です。彼が生涯に残した作品は30数作あり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥