プラトン『ポリテイア(国家)』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ギュゲスの指輪…悪事がバレないとき人は正義でいられるか
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(5)「正義とは何か」の問い
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
「正義とは何か」をめぐる第1巻の問答は序曲であった。第2巻以降、プラトンの兄たちによってソクラテスの正義論はさらに追究を深めていく。その中では「善きもの」の3分類、社会契約論の否定、「ギュゲスの指輪」という思考実験など、ソクラテスに対する驚くべきチャレンジが続いていく。(全16話中第5話)
時間:17分17秒
収録日:2022年7月8日
追加日:2022年12月15日
≪全文≫

●グラウコンとアデイマントスによる挑戦


 プラトン『ポリテイア(国家)』の「正義とは何か」という問いがどのように起こったかということについて、お話ししていきます。

 第1巻の議論では、3人の対話相手と一緒にソクラテスが「正義とは何か」ということを議論して、その3人のそれぞれの考えを論駁して終わってしまいました。つまり、「分からないね」ということで終わったのですが、それはいわば序曲にすぎないといわれます。ここから本曲が始まるということです。

 場面が一転するのは、ソクラテスと一緒に歩いてきて、それまで黙っていたグラウコンという若者がソクラテスに向かってチャレンジするところからです。彼(グラウコン)は、「今の議論では納得できない。正義は不正に勝っているのだということを、本当に説得してもらいたい」と言います。そんな中途半端な議論では駄目だと挑んでくるわけです。

 これは非常に面白くて、グラウコンと次に出てくるアデイマントス(プラトンの兄)は、いつもソクラテスと一緒にいる仲間です。だから、だいたいソクラテスと同じような考えを持っているはずで、トラシュマコスのような敵とは違います。ところが、グラウコンはあえてトラシュマコスの議論を引き受けるという役割を買って出、そういうふりをして、強い議論をぶつけてきます。つまり、グラウコンはトラシュマコスとは違う考えを持っていたはずなのに、あえてそれだけ強力な議論をぶつけていくのです。

 これはプラトンという人が意識していたことで、もしかしたらプラトン自身がソクラテスに向かってチャレンジをしているのではないか。そうも想像されます。そのチャレンジが大きければ大きいほど、最後にその説得力が当然増すわけですから。

 そういうことで、第2巻の前半部は、グラウコンとアデイマントスの二人のチャレンジで幕を開けます。とりわけグラウコンが提示する3つの議論は非常に強力かつインパクトの強いもので、それが今日に至るまで倫理学の大きな問題を引き起こしているということになります。


●「善いもの」の3つの区分と正義


 グラウコンは最初に、「善いもの」を3つに区分することを提案します。

 1つ目は、それ自体としては善いけれど結果は伴わないもの。つまり、今は楽しいけれど、後には別に何も善くないというものが...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
人生に活かす東洋思想(1)人生の成功とは何か
東洋思想の「徳」や「道」をわかりやすくいうと?
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(35)鶴見太郎先生の公開収録を振り返る
【10min紹介】鶴見太郎先生の公開収録を振り返る・・・お寄せいただいた声
テンミニッツ・アカデミー編集部
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(4)認知症と共生社会の実現に向けた対策
その物忘れ、認知症かも…加齢による物忘れとの違いと一番大事なこと
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
「満洲」から考える日本とアジア(8)日貨排斥と満洲事変の原因
なぜ満洲事変が起きたか…激烈な日本排斥と朝鮮人迫害、さらに一方的な条約無効化に直面した日本人の決断と失敗
宮脇淳子
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ