プラトン『ポリテイア(国家)』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本の小学校で「音楽、体育」を学ぶのもプラトンの影響?
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(7)2つの教育論〈上〉初等教育
哲学と生き方
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
国家の守護者や軍人を育てるために必要なのが教育であることから、言論によるポリス建設は途中から教育論となってくる。そこで彼らに必要だとして語られている教育論は、初等教育と高等教育の2段階で、初等教育は学芸と体育の二本柱で構築される。驚くべきことにこの2段階の教育論は、現在の日本の学校教育にもつながっているのである。(全16話中第7話)
時間:11分34秒
収録日:2022年7月8日
追加日:2022年12月29日
≪全文≫

●ポリスの守護者を育てるための2つの教育論


 言論によるポリスの制作・建設を進めていく中で、ポリス全体を配慮する人が必要である、それは軍人であり、守護者になるべき人だ、というところに話が進みました。

 では、彼らはどういう人であるべきか。当然、さまざまな資質が必要です。人の上に立ち、全体を配慮しなくてはいけないのですから、知恵があり、勇気があるということになります。そこで重要になるのは教育だということで、教育論が始まります。

 教育は、ギリシア語では「パイデイア(paideia)」と呼ばれますが、プラトンの『ポリテイア』という本は西洋哲学史上、あるいは西洋学問史上、最大の教育論の本です。今でも教育学の中の古典になっています。

 パイデイア論は、本書では2カ所にわたって語られます。一つは第2巻から第3巻のあたりで、私は「初等教育論」と呼んでいますが、日本でいえば小学校ぐらいの子どもたちを対象とするものです。さらに、イデア論が出てきた後の第7巻にもう一度教育論が出てきます。こちらは、一応「高等教育論」と呼びますが、国のトップになるよう選抜された人の受ける教育であり、哲学教育です。現在でいうと、大学教育に当たると考えていただけばいいでしょう。これら2段階の教育が組み合わさってポリスの教育が語られるので、今回からそれらの2ヵ所を並べてご紹介していきたいと思います。

 これは軍人や守護者のための教育として語られていて、その選抜に関わりますが、一部のエリートだけの教育と考える必要はないと私は思っています。なぜかというと、理想的なポリスの場合は、例えば農民であれ職人であれ、一定程度教育に与っていないと、うまく成り立たないからです。彼らが全く教育を受けていないのではポリスは成立しない。とりわけ最初の初等教育は全員が受けていると想定しても構わないと考えています。

 この2段階の教育論は、驚くべきことに現代までつながっています。もっというと、現在の日本に直結しています。このように、論証なしに断定してしまうと、皆さんはびっくりされるかもしれません。

 現在の日本の小学校に、なぜ音楽と体育という科目があるのでしょう。音楽の授業で、ピアノに合わせてみんなで歌うことに、何かいいことがあるのか。もっといえば、体育は何のためにあるのか。体育という科目が西洋から明治の日本に導入された時には...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子