プラトン『ポリテイア(国家)』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
理性・気概・欲望…ポリスとの類比でわかる「魂の三部分説」
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(9)魂の三部分説
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
国家論を議論しているようにみえる『ポリテイア』だが、本当のテーマは「魂(プシューケー)」ではないか。ポリスにおける正義・不正を見ることで、類比的に、人の魂を考察できるからだ。ポリスの階層(守護者・軍人・生産者)になぞらえて、魂にも3つの階層「理性・気概・欲望」があると考える。これが「魂の三部分説」である。(全16話中第9話)
時間:12分14秒
収録日:2022年9月27日
追加日:2023年2月10日
≪全文≫

●正義と不正を説明するための「魂の三部分説」


 プラトン『ポリテイア』の議論を追ってきました。今回は魂というものの議論についてご紹介します。

 魂をギリシア語では「プシューケー」といいますが、このテーマは実は今までも何度か出てきていました。覚えていらっしゃるかと思いますが、ポリスの正義を考えるにあたって、魂とポリスとの対比がなされたところ、そして、初等教育論のところでは学芸と体育という2つのプログラムが魂の教育であると語られていました。

 実はこの『ポリテイア』という対話篇は、魂が本当のテーマではないかともいわれています。国家論を議論しているように見えるかもしれませんが、全体のフォーカスは魂のあり方というところにあるのではないか。その意味で今日お話しする話は、中心に関わっているとご理解いただけると思います。

 プラトンの魂論では『パイドン』という対話篇に出てくる「魂の不死論証」が有名ですが、(『ポリテイア』では)少し違う角度から魂について検討がされていきます。どう違うかというと、今日お話しする「三部分説」で、「魂は3つの部分から成り立っている」という新しい説をプラトンが唱えているのです。

 なぜそんな議論をするかというと、正義と不正を説明するためです。これはおいおい(申し上げますが)、今後不正を課題としていく中では、欲望の問題が大きくなっていきます。それを考察するために、魂には違う能力(パーツ)があるのだという考えを導入する。それが今日のお話になります。

 さてすでにお話ししたように、「正義とは何か」を考えるにあたって、ポリスと魂の2つを類比関係で捉えるのが、この話の進行状況です。

 ポリスの正義、つまり社会の正しいあり方と、人の正しい生き方というのは、大きな正義と小さな正義という形で、いわば類比関係になっているという話でした。その中で、最初にポリスを見ていこうという話を(前半では)していたわけです。


●ポリスと魂を交互に見れば、正義が輝き出す


 ここからは、魂のほうに目を向けてみましょう。どうしてかというと、正義というのはおそらくどちらにもあるわけです。ポリスの正義において、正しい社会と正しい個人のあり方を見比べていくと、両方をかわるがわる見る間に「正義が輝き出す」と、プラトンはやや文学的な表現を使っています。要するに、正義とは何かを見る...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治