哲学の役割と近代日本の挑戦
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現代の生き方のモデルをつくった古代ギリシアと哲学の強み
哲学の役割と近代日本の挑戦(2)哲学はパターンと論理に強い
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
人間の歴史には、規模や風土の違いこそあれ、定型のパターンがある。複雑で流動する現実からある種の型を読み取るということだが、哲学の強みはそこにある。そのためには物事を抽象化して考える必要があり、そこで重要なのはアナロジーである。これは数学的な用語で「類比」という概念だが、それによって数学は発展している。暴走する欲望問題と直面する現代人にこそ、プラトン哲学は必要な教養なのだ。(全6話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:10分05秒
収録日:2023年7月28日
追加日:2023年10月7日
≪全文≫

●古代ギリシアのポリスと、現代とを比べてみると?


―― それにしてもプラトンはすごいですね。欲望の種類をいろいろと分類して、危ない欲望と持ってもいい欲望を非常にきれいに分けていたのですね。

納富 そうですね。逆に現代のほうが、問題はもっとリアルになっているともいえます。プラトンの時代ももちろん貨幣経済だったので、(そうした問題はすでに)ありましたが、予言のようにも見えます。つまり、今のようなヘッジファンドや何かが世界中のお金をコントロールするような時代ではなかったにもかかわらず、あの時代におそらくそれを予測したのです。その時代に起こり始めていた問題の本質は、今のほうが大きくなってしまっている。その意味で、むしろ(今の)私たちが学ぶところは大きいかと思います。

―― なるほど、たしかに今のほうがあからさまですね。

納富 それに規模が大きくなっています。ギリシアの時代はせいぜいポリスがあったエリアの話で、戦争もその範囲でした。今は一気に世界的な問題になるので、より深刻ではないかと思います。

―― ギリシアのポリスの場合、市民社会としては数千人から数万人くらいで、非常に理想的なコミュニティでしたが、そこにプラスして奴隷制度が入ります。そこの部分が少し分かりにくいので(説明いただけますでしょうか)。

納富 そうですね。おっしゃる通りで、ギリシアのポリスというのは一種の都市国家のような形で、プラトンやアリストテレスは、その中でも市民(自由人)のところだけを取り上げたので、非常に理想的な民主政を実現していたように思えます。しかし、実際には社会基盤がありますので、現代のような「国民主権」というような話とは大分違います。

 例えば、市民が数千~1万人ぐらいいるとしても、おっしゃったように奴隷もいます。ただし、奴隷が市民の何倍もいるほどではありません。基本的にギリシアの奴隷は家内奴隷としてお手伝いさんのように働く人が多かった。それから、外国の人のように市民権のない人もたくさんいました。税金は払うけれども権利がない人もいたわけです。

 それから、女性についてはいろいろな問題がありまして、市民の女性はやはり市民団(の一員)ですが、投票権のような権利はありません。全体を合わせてみると、(ポリスの)一部である男性市民がかなり大きいところをコントロールしていました。そこを見...

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