哲学の役割と近代日本の挑戦
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哲学の役割と近代日本の挑戦(6)歴史を動かす人物と歴史の見方
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
戦前はとても国際的で、三木清や九鬼周造がドイツに留学し、当時の最先端の哲学を現地で学ぶなど、世界的にも哲学に切磋琢磨した時代だった。その時代についてもちゃんと覚えておくべきだし、さらにいえば、そうした時代に歴史を動かした人物を見ることも重要である。 なぜ危機の時代に人材を輩出できたのか。歴史的なデータには残らない人物としての魅力、「人の大きさ」という点で動いてきた部分もある。そこと向き合うことが、これからの歴史を動かすヒントになるのではないだろうか。(全6話中第6話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12分41秒
収録日:2023年7月28日
追加日:2023年11月4日
≪全文≫

●戦前は国際的で人の往来も多く、切磋琢磨して哲学を学んだ時代


―― 最後になりますが、日清戦争から辛亥革命までの間、清朝が科挙を廃止して、孫文も周恩来もみんな、どんどん日本へ来ました。その中国人のうちの8割方の人がなんらかの形で、頭山満や宮崎滔天、梅屋庄吉、あるいは安川財閥の安川(敬一郎)――屋敷の中に別宅を建てて孫文を4年間住まわせ、毎月500円ずつ小遣いを渡した――というような人たちのサポートを受けました。そこがけっこう消し去られてしまっているように思います。

納富 おっしゃるように本当に、戦前のフェーズを見て、大正や昭和など、どこまでのことかということを見ながらでないと、“軍国”ということで一緒くたにできるわけでもないと思います。

 また、本当に忘れてしまっていますが、大正や昭和のはじめは逆に非常に国際的で、人がヨーロッパなどにふっと行って、文化面では画家も小説家もみんな行くような、卓越した時代があったわけです。それこそ「モダン」という単語をたくさん使うようになった時代でした。そういうものは、後から見るとなかなか見えてこないということもあります。

 日本、中国、韓国については――韓国は併合問題があるので難しいのですが――中国との関係でいうと、多分日本は日清戦争に勝ったとはいえ、やはり中国に対する、ある種の敬意も含めて、やはり“お互いに”という感じが文化的にもあったと思います。

 哲学者についても、(本シリーズ講義内で)日本でさまざまな概念をつくったと申しましたが、中国から日本に留学して哲学を勉強するわけです。東大の(哲学科)桑木厳翼などから学んだり、いろんなところにきたりして、ドイツ哲学を勉強する。その人たちが帰っていって、またカントやそういうものを中国で教えるということがあった。

 そこは、日本のほうが(哲学の進展が)少し早いところはありますが、お互い様で行ったり来たりしながら、ある種“よくしよう”という感じでしょうか。日本が中国から搾取しようというのではなく、アジアとして“よくしよう”という、兄弟のような感覚は強かったのではないかと思います。

 だから、その時代についてもちゃんと覚えておくべきだし、もっといえばヨーロッパやアメリカとの関係にしても、べつに屈服しているわけでもなく、文化を非常に強く(学ぼうとしている)。

 例えば、第一次大戦の直後ぐらいと...

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