哲学の役割と近代日本の挑戦
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福沢諭吉ら第一世代の慧眼と夏目漱石ら揺れる世代の対比
哲学の役割と近代日本の挑戦(3)明治の哲学とペリクレスの民主政
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
幕末・明治初期の日本人が慧眼だったのは、初めて遭遇した西洋を知るため、福沢諭吉や岡倉天心をはじめ第一世代といわれる彼らが恥じらいなく西洋へ飛び出し、また西洋から入ってきた新しい学問を一斉に勉強したことだ。一方、夏目漱石をはじめとする第二あるいは第三世代は、個人の内面に深く入っていくことになる、いわば揺れながら進む世代である。今回はその違いについて触れるとともに、ギリシアにおけるペリクレスの位置づけを知り、現代政治と照合していく。(全6話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12分56秒
収録日:2023年7月28日
追加日:2023年10月14日
≪全文≫

●東大哲学科の伝統…明治期に哲学を学んだ慧眼


―― 先生のお部屋(東京大学文学部哲学研究室)を見に行ったときに教えていただいた話では、1877年の東京大学設立の年に、すでに哲学科があったということでした。お話の中では、西周(にし・あまね)はもともと幕命で法律を学ぶためにオランダへ行かされた。そして、その後ろ側にあるものを知るために、ギリシア・ローマの哲学、あるいはキリスト教を学ぶことが大事だと気づき、「(法律と哲学)両方勉強させてくれ」と言ったということでした。これは、すごいことですね。

納富 いやいや、驚くべきですが、日本の伝統や文化は本来そういうものです。つまり、自分が見ているものがどのぐらい深いか、あるいは裏に何があるかが見えてしまう。今の自分はこの辺でやっているけれども、実はここまで(深いところに基礎が)あると(見える)。その感覚が重要で、目の前のものをどうこなすかという話ではない。奥がどこまであるかが見えないと、手前ができないということではないかと思います。

 (江戸時代の)学問のレベルも、今の日本からみると儒学や国学は訓詁的に見えますが、そこで徹底的にそういう教育がされていたということだと思います。

―― 哲学科では、最初の頃に岡倉天心がいたり嘉納治五郎がいたり、すごい人たちばかりですね。

納富 そうですね。哲学科には、井上円了や清沢満之、大西祝などのすごい人たちもいました。哲学といっても、哲学だけを勉強していたわけではないところがまた面白い。そのようなお話をさせていただきましたが、やはり幕末から明治に入り、日本が西洋に追いついてがんばろうとなった時に、みんなが哲学を一斉に勉強したのは、本当に慧眼だと思います。


●造語を多数生み出した明治初期の日本


納富 そうした中、造語として新しい単語(哲学用語)をつくるわけです。それらは今、中国人や韓国人から注目されています。井上哲次郎などを中心に『哲学字彙(じい)』という用語集ないし辞書が編纂されましたが(初版1881年)、それを元にして中国や韓国で今も用いる西洋哲学の翻訳語が、全てではないにしろ東アジア中で共有されています。日本にそういう適応力のようなものがあったのは驚きだと思います。

―― 「経済」にしても、「議会」にしても、「演説」にしても、それはすごいクリエイティビティですね。和製漢語みたいなも...

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