世界哲学のすすめ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
哲学世界の「4つの共通言語(リングワ・フランカ)」とは
世界哲学のすすめ(7)哲学の言葉
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
世界哲学を遂行していく上で避けては通れないのが言語の問題である。哲学では、議論するための言語として、かつてギリシア・ラテン語をはじめ4つの「共通言語(リングワ・フランカ)」が使われてきたが、今はそれが英語になってきている。しかし、そこには自然言語との間にはズレがある。哲学が日常言語を鍛えて哲学概念をつくり、それを議論して発展させる営みである以上、言語の違い、その問題をどう乗り越えていくか。ここが非常に重要な課題である。(全9話中第7話)
時間:12分06秒
収録日:2024年9月6日
追加日:2025年2月26日
≪全文≫

●世界哲学を遂行する上での言語の問題と「リングワ・フランカ」


 世界哲学がどういうものか、どういうやり方ができるのかを考えてきました。ここでは、その中で中心的になる問題をまず一つだけ取り上げて、ご紹介したいと思います。

 それは言語、言葉の問題です。哲学というものは生き方であり、世界を見るということですが、やはり言葉と切り離すことはできない。なぜならば、私たち人間は言葉を使って生きてきて、その言葉を使って考えていく。だから、ここにはかなり強い結びつきがあります。

 哲学が言葉を通じて遂行するものである以上、当然言葉によって異なってくることがあり得ます。今、少し抽象的に「言葉」と言ったので、「そうかな」と思ったかもしれません。具体的には、自然言語のことです。今、私が皆さんに向かってしゃべっているのは21世紀の日本人がしゃべっている日本語であり、日本語にも時代に応じて変化はあったし、もっというと、中国語や英語やアラビア語や古代ギリシア語とは違う。そうすると、この言葉、言語の問題を一体どう捉えるかということが、世界哲学にとっては思いがけず大きな問題になるのではないか。そして、それがむしろ重要なカギになるのではないかと考えています。

 哲学と言語というと、皆さん、どう思われるでしょう。現在、例えば世界中で集まって国際学会などを行うとき、全部ではありませんが、多くの場合は英語で議論します。私自身もそうですし、自然科学ではもっとそうです。科学の分野はもう英語のみになります。私たち哲学の分野はフランス語や中国語なども使いますが、基本的にはいくつかのメジャーな言語で行います。

 これは実際上仕方ないというか、例えば私が南米のブラジルの方と議論するときには、「仕方ない、英語を使いましょう」となるし、韓国の人と議論するときにも「英語を使いましょう」というのは、実践上の役割もありますが、もう一つ、それが「Lingua Franca(リングワ・フランカ)」と呼ばれる共通語だからということです。

 つまり、その分野で研究をしたり、考えたり、ないしは議論したりするためには、「この言語を使いましょう」という約束がどの時代にもある。それなしに、全ての人が自分の言語でしゃべってしまうとコミュニケーションが取れなくなるし、そもそも学問ができなくなる。

 そうすると、哲学においてこの「リングワ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ