伊福部昭で語る日本・西洋・近代
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
西洋の二元論と東洋の多様性ある一元論…岡倉天心の喝破
伊福部昭で語る日本・西洋・近代(6)西洋の二元論か東洋の一元論か
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
戦時中に伊福部昭の音楽が多く取り上げられた背景には、日本全体をとりまく、ある傾向の影響もあった。それは、岡倉天心のような「アジアは一つ」とも似た一元論的な思想である。西洋の没落とともに浮上したこの思想とはいかなるものか。音楽のみならず政治・経済分野などさまざまな分野にみられた兆候・傾向を解説する。(全8話中6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分51秒
収録日:2023年9月28日
追加日:2023年12月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●岡倉天心の「アジアは1つ」という思想


片山 特に昭和10年代に人気が出たのは、明治時代の思想家・岡倉天心です。岡倉天心は「アジアは1つである」など大東亜共栄圏に利用できることをたくさん言ったということで、政治的に思い出された面もあります。

 岡倉天心がなぜ「アジアが1つ」と言ったのかを、ここで整理させていただきます。要するに、アジアには儒教もあれば、バラモン教、ヒンドゥー教、インドの伝統もあれば、仏教もあるということで、同じアジアの中でもバラエティがある、全然違うものがあるように見えるかもしれないけれども、岡倉天心は「それを乗り越えて、1つの要素がある」と言ったのです。

 まず、「西洋とはっきり違う1つの要素がアジアにはある。それは一元論である」と言います。西洋の場合、特にユダヤ教、キリスト教、イスラム教の伝統がつくった一神教の考え方について、一神教だから一元論かと言うとそうではない。神が世界を創造したわけですが、創造された者と創造した者は絶対に一緒にはなりません。もちろん、これらを近づけていくという神秘主義的な考え方はあります。しかし、創造した者と創造された者が一元化してしまっては、キリスト教も何も成立しないわけであって、これは絶対的に違うものだということで成り立っているわけです。

 ところが、ヒンドゥー教になっていくバラモン教の伝統はどうか。梵我一如です。梵我一如とは、宇宙の本質である「梵」(ブラフマン)と、1人ひとりが全部違うものの「我」(アートマン)が「一如」である(本質を共有している)。「梵」の現れ方がそれぞれに違っているだけで、全部一元論なのだと解釈できます。

 仏教はどうか。仏教は、「仏と人は違う」という話ではありません。修行をしたら悟りを開いて仏になっていくわけですから、1人ひとりの心の中に、仏になれる要素がある。(蓮華座ではありませんが)花開かせると誰でも(仏になれる)。仏像が蓮華の上に乗っているのはなぜというと、1人ひとりの普通の人間の心の中にある仏になれる性質が花開いたから、花開いた上に仏になっているのです。人間が皆、仏になるわけです。

 仏は偉大であって、人間とは全然別のものだという考えは、オリジナルな仏教にはない。ただ、1人ひとりがうまく花開けないことが多いので、阿弥陀仏やお釈迦様に助けてもらおうという話になる。仏教とは人間の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫