伊福部昭で語る日本・西洋・近代
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
西洋音楽の「異常な変拍子」と伊福部昭の「乗れる変拍子」
伊福部昭で語る日本・西洋・近代(4)変拍子で音楽が生きる
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
伊福部昭の音楽の特徴として、変拍子を巧みに使っていることがある。変拍子をつかった作曲家は海外にも多くいるが、伊福部昭の曲とそれは何が違うのだろうか。そうした変拍子に対する考え方が、日本的なもの、アジア的なものを彼の曲から想起させる遠因になっていると片山氏は解説する。(全8話中4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分54秒
収録日:2023年9月28日
追加日:2023年12月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●ゴジラのテーマ曲は軍隊マーチ


片山 最初に聴いていただいた『ゴジラ』のメイン曲の話を少しさせていただきます。

 最初に聴いていただきました曲は、「ゴジラのテーマ」といわれていますけれども、映画を見ていただくと分かる通り、ゴジラが出てくるシーンに当ててあのメロディが流れるのではなく、ゴジラに対して自衛隊や消防隊がいら立ち、活躍しようとしてゴジラにやられて立ち向かっていくときに流れてくる。つまり、マーチなのです。自衛隊や軍隊のマーチのイメージで、あの曲を作っているのです。

 ところが、マーチであれば2拍子のはずなのに、「タタタン、タタタン、タタタタタタタタタン、タタタン、タタタン」と、数字で数えると「12、34、56789、12、34、……」と9で区切りがついている。2拍子で考えた場合、にしがはち(2×4=8)か、にごじゅう(2×5=10)でなければいけないのに、1拍違うのです。これがイライラを生む、というのが伊福部昭さんのアイデアで、ゴジラに立ち向かう人間のイメージになっている。

 つまり、普通に安心して、堂々と行進して、2拍子のままであるならば、ただのマーチです。1拍足りない、または1拍増えている(8+1、または10-1など)という「奇数が入る」ことによって落ち着かない状態になる。

 この「奇数が入る」ことは、落ち着かないということも表現できるけれども、即興的だということを最も表現できるのが、奇数が入ったり変拍子になったりすることなのです。マーチだから「1、2」で行くはずなのに、急に「1」が入ったり、「3」が入ったりする。これで「おかしいな」となることによって、感覚が新鮮になる。

 伊福部さんは「突飛なことを考えたつもりはない」ということを私にもよくおっしゃっていました。


●即興的であることを追体験できる仕掛け


片山 本来、民族的なもの、生きた芸能というものは、先ほどのアイヌの芸能に表れているように即興だから、その場で考えている。その場で考えているから1つのパターンはあって、2拍子や4拍子、あるいは3拍子に乗って、言葉を口ずさんでメロディを作っている。しかし即興で作っていると、必ず「次、どうしようかな」と考える。そこで微妙に間が入って、「ウッ」と止まったり、また平然と始めたりする。だから、生きた芸能というものは必ず定型から外れて、1拍伸びたり縮んだりする。変拍子を使うことによって、そ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(2)プロテスタントと「予定説」
カトリックとプロテスタントの違いは?「救済予定説」とは?
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝