伊福部昭で語る日本・西洋・近代
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
2つの主題を対比する交響曲を超克し、1つの旋律で多様に
伊福部昭で語る日本・西洋・近代(5)西洋音楽の型の超克
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
近代西洋では複数の要素を複雑に構成することがレベルの高い音楽だとされたが、「西洋の没落」が見え始めるとともにその傾向は見直され、1つのものを重視する方法に回帰していく。「複数の要素を構成する」とはどういうものか。また、それがどのようなものに移り変わったのか。ベートーヴェン「交響曲第5番」(いわゆる「運命」)、伊福部昭の出世作となった「日本狂詩曲」第1楽章などを聴きながら解説する。(全8話中5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分28秒
収録日:2023年9月28日
追加日:2023年12月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●楽譜を書くのは西洋近代文明的で堕落している


―― 今、「アジア的なもの」や、もともとがどうだったのかについてのお話になりました。確かに明治に日本は開国し、西洋の文化が入ってくる。その中で、近代的な教育を受けているわけですし、音楽も西洋のものが入ってくる。明治はそうですし、とりわけ昭和の戦争の時期はそうだったと思います。

 では、アジアとはいったい何なのだろうか。日本とはいったい何なのだろうか。当時でいうグローバリズムで西洋文化が世間を席巻していく中で、自分たちとはいったい何なのだろうか。無理にスーツを着ても、やや違和感がある。そういった違和感の中から紡いでいったものがあると思います。それが非常に先鋭的に、おそらく昭和10年代の戦争の期間は、日本の知識人も含めて直面したことでしょう。当時の日本人たちが、特にアメリカと戦う、イギリスと戦うという空気の中で考えた、アジアなり日本というものはどういうものだったのですか。

片山 これもまた、いろいろな考え方があり、当時の日本の中でも大変いろいろな方向性が出てきているので、一概には言えません。

 ですが1つは、音楽にフォーカスして考えると、楽譜をきちんと書いて、オーケストラや和音、リズム、拍子など、そういったこと自体が作為的であるというものです。

 これは伊福部昭さんの立場より、もっと先鋭化している。何でも全て即興で、古代インドのような雰囲気で、皆が無心になって勝手に楽器を演奏したりする。伊福部さんはそういうものを楽譜に書いたということなのですが、「楽譜などもういらないのではないか、楽譜を書いて一生懸命それを演奏しているということが、すでに西洋近代文明的であって堕落している」といった極端な民族音楽学者もいました。「それが本当のアジアなのだ。大東亜共栄圏の音楽というものは楽譜もいらなくていい。全部即興でいいのだ」といったことを言う人まで現れたわけです。


●複数のものを劇的に葛藤させるクラシック音楽


片山 もう1つ、これは伊福部さん(の問題意識)にもやや近いところがあるのですが、西洋近代の音楽は複数のものを論理的に構築し、組み合わせるといったことを一生懸命行う、そういった考え方(ややこしく複雑に作れば作るほど立派なのだという考え方)がある。それはベートーヴェンの交響曲を聴くとよく分かります。

―― そのベートー...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎