伊福部昭で語る日本・西洋・近代
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アイヌの即興的な歌や踊りのなかに見つけた「音楽の命」
伊福部昭で語る日本・西洋・近代(3)アイヌコタンでの経験
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
日本の戦時中に多く演奏されたのが伊福部昭の「交響譚詩」である。日本の民謡をそのまま曲にしているというわけではなく、オリジナリティが高く、それこそ日本的ともいえる曲であるが、なぜそのような独創的な曲を作ることができたのか。それは彼の幼少期の体験が大きく影響している。北海道は帯広の北に音更(おとふけ)という村(当時)があり、彼はそこに小学校4年生から6年生の間、住んでいたのだが、そこにアイヌの集落があったのだ。そこでの経験をたどりながら、本当の芸能について彼の発想を解説する。(全8話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分49秒
収録日:2023年9月28日
追加日:2023年11月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●日本的であるけれども民謡ではない楽曲


片山 戦争中に演奏された伊福部昭さんの曲の中でも、演奏回数が飛び抜けて多かった曲があります。昭和18(1943)年に、日本国内のコンクールで1位を獲って、すぐにSPレコードになり、また日本のオーケストラ音楽として素晴らしいものだという国家のお墨付きである「文部大臣賞」をもらうなどしました。そうして広く流布した曲に「交響譚詩」があります。

―― 少し聴いてみましょう。第1楽章をかけたいと思います。

 (音楽:「交響譚詩」挿入)

―― ただいまの演奏は、「譚-伊福部昭 初期管弦楽 伊福部昭の芸術1」、指揮は広上淳一さん、日本フィルハーモニー交響楽団の演奏でした。

 今、聴いた曲もそうですけれども、例えば「日本の民謡を曲にしています」「お祭りをそのまま曲にしています」ということではなく、かなりオリジナリティが高いのだけれども日本的である、という形ですね。

片山 そうですね。例えば日本的な民謡というと「木曽節」「ソーラン節」、あるいは「五木の子守歌」などの有名な民謡、子守歌やわらべ歌などのメロディをそのまま使っても、もちろん日本的にはなります。フランスの作曲家も、ドイツの作曲家も、ポーランドの作曲家も、ロシアの作曲家も、ストレートに民謡を使った曲はたくさんあるわけです。

―― そうですね。ストラヴィンスキーもロシア民謡をよく使っていますよね。

片山 そうです。だから、そういうやり方で民族的なものを表現することは、外国の作曲を含めて、当たり前といえば当たり前なのです。伊福部さんもそういうことを考えないわけではなかったのですが、民謡はそれ自体が作品になっていて、1つの完結したものであるから、それをそのまま使うのは安直である、というのが伊福部さんの発想です。

 民謡をそのまま使うものがないわけではありませんが、あまりよろしい道ではないと。もっと素直に、土俗的に生まれてくる音楽の源にさかのぼったものを作りたい、というのが伊福部さんの発想だったのです。

 「木曽節」「ソーラン節」など、私たち日本を代表する民謡はいろいろと思いつくでしょう。これは、例外もありますが、ほとんどが大正や昭和に入ってから歌われ、人口に膾炙して、レコードにもなって有名になったのです。実は山田耕筰などいろいろな作曲家が、民謡風の新しい日本の歌を作ろうなどという...

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