伊福部昭で語る日本・西洋・近代
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
近代の超克への道…「多様性ある一元論」とポストモダン
伊福部昭で語る日本・西洋・近代(7)近代の超克という課題
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
昭和10年代のいわゆる日本の全体主義は批判されがちだが、なぜそこに向かうことになったのかを冷静に見直す必要があると片山氏は語る。当時の「西洋の没落」の流れを受け、アジアや日本が自らの独自性を見出そうとした世界の趨勢や日本の状況を、伊福部昭の音楽になぞらえながら読み解く。(全8話中7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分13秒
収録日:2023年9月28日
追加日:2023年12月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●一元論モデルは現代でも有効か


―― 今の先生のお話を聞いていると、現代の日本人としては、いろいろと腑分けをしていく必要があるのではないかと思います。

 時代的には、先ほど先生が言及されたシュペングラーの『西洋の没落』のように、西洋がこれからはダメになるという気分もある。大恐慌があったので、資本主義のようなものもダメなのだという流れもある。これらは西洋から来た流れです。片や日本のほうでは、明治維新後の開国の中で岡倉天心が直面したような「東洋とは何か」という思考もある。それらがたまたま一緒になったので、昭和10年代のような雰囲気となった。しかも戦争の時代でもあり、全体主義のいろいろな悪い面も如実になって、「ひどい時代だった」といわれています。

 そういうものを1度、客観的に腑分けをし、「あのときに日本人が考えたアジアとは何だったのだろう。近代をどうポストモダンに持っていくのだろう」という問題意識だけを切り分けた場合、どういう点が現代に響いていると思いますか。

片山 今、上手に整理していただいた通り、西欧近代の流れが1度、(その後また復元するわけですけれども)世界大恐慌期から少なくとも資本主義、自由主義が大きな変調をきたして、もう無理だろうと言われる。だからこそ、世界的に社会主義、共産主義の方向に向かったわけです。

 あれだけ頭のいい人たちが皆、なぜ左翼になってしまったのか。それは資本主義、自由主義が、人類の数も増えていき、産業構造も複雑化していき、文明の形態も複雑になっていく中で、「自由にやっていればいいというものではないだろう。修正資本主義的な考え方でも、どこかで破綻するだろう。だから社会主義なり、共同体主義的なものに行かざるを得ないのだ」という流れがあった。


●一元論の中で多様性をつけていく


片山 今、川上さんが整理してくださったように、日本というか、アジア的なものは、1人ひとりの個性や個々の企業活動といったものが自由に発展するほうに到達しないまま、西洋に影響されて、教えられたというような面がある。だから一元論的ものは、悪くいえば「共同体的なものの中に、個人が何かしたいと思っても押し潰されていく」ようなことで、ダメなのだとされた。

 それゆえ、「1人ひとりが文明開化し、福沢諭吉的な精神で、西洋の学問をして独立する。そして自由な経済活動をする。そ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
日本画を知る~その技法と見方(1)写実・写意・写生
日本画で大切な「写意」「写生」の深い意味とは?
川嶋渉
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎