●考え、伝え、聴き、会話・議論するための「重要思考」
皆さん、こんにちは。三谷宏治といいます。今日はこれから『〔新版〕一瞬で大切なことを伝える技術』(知的生きかた文庫、三笠書房)、この文庫の水色の本をベースに、まずは3ステップのお話をしたいと思います。
まずはこの本の中心課題である「重要思考」ということです。実はこの文庫になる前に、もう10数年前でしょうか、この前の本があります。四六判の『一瞬で大切なことを伝える技術』です。かんき出版というところから出したのですけれど、編集の方が来られて、「三谷さん、伝える技術という本を書きませんか」というご提案がありました。
でも彼は、それまでに私が書いた本も読んでいて、「分かっています、三谷さんが言いたいことは伝える技術ってことじゃないですよね」と言うのです。その通りです。私は伝える力が9割などとかけらも思っていません。中身がないのに伝えても仕方がありません。私が一番大切にしていることは考えることです。
でも、彼は言うのです。残念ながら、考えるという本はあまり売れません。考えるという本は、読者に「おまえは考えていない」と突きつけることになるのであまり売れないのです。だから、「考えはあるけれど、うまく伝わりませんよね」と言うと、本は売れるのです。ということで、「では、いいだろう、タイトルは『伝える技術』だ」と。
でも、私の本なので、第1章は「考える」です。ちゃんと考えていないから伝わらないのです。だから、ちゃんと考えよう。ちゃんと考えれば自動的に伝わりやすくなるよ、となっています。
でも、このタイトル(書題)には、もう1つ大きな嘘があります。それは伝える技術という本なのに、「伝えてうれしい」ではありません。それで終わりではありません。最終的な目的はちゃんと議論ができることです。ちゃんと議論をする。そのためにはもう1ステップ必要ですよね。それが「聴く」ということです。聴覚の「聴」という漢字を使っています。
最近、よく「傾聴」といいますよね。もとからある日本語ですけれど、今われわれがよく使ういわゆる「傾聴」は、心理学用語としての傾聴でしょう。カウンセリングだとかコーチングで使うようになったから、「傾聴」「傾聴」といいます。...