聖徳太子「十七条憲法」を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
議論で和を実現せよ、怒りと執着を捨て凡夫の自覚を持て
聖徳太子「十七条憲法」を読む(5)条文を読む…和と議論
賴住光子(東京大学名誉教授/駒澤大学仏教学部 教授)
「議論によって和を実現する」――これは、十七条憲法の条文の中で最も多くかつ非常に重要なこととして第一条、第十条、第十五条、第十七条に記されている内容である。議論を尽くすことにより自ずと立ち上がる道理。また、その前提となる「凡夫」としての自覚。そして自己に対する執着を捨てて、「公」を志向するという考え方。それらがいわゆる「忖度する」や「空気を読む」などとは異なり、真の「和」に通じる道なのである。(全6話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分19秒
収録日:2023年8月24日
追加日:2024年1月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●第一条を読む――和と議論、結果として生まれる共同性


―― では賴住先生、続きましていよいよ十七条憲法の条文に何が書かれているかということを逐次見ていきたいと思います。先生から(事前に)、いくつかの区分けを提示いただきました。一つ目は「議論によって和を実現する」というところですね。

賴住 はい。

―― これは本当に前回の先生の講義でも強調いただいた、非常に興味深いところですが、それがまず第一条から出ているということで、そのあたりを見てまいりたいと思います。

 第一条というと本当に有名な「一に曰く、和を以て貴しと為(たっとしとす、とうとしとす)」というところから始まるものですが、先生に現代語訳をしていただいていますので、(スライドでは原文を取り上げながら)まず読んでまいりたいと思います。

 「第一条。和を尊重し、人に逆らわないことを心がけよ。世人はとかく党派を結びがちであり、また、物事を弁えた人は少ないから、主君や親に逆らったり、近隣の人と争ったりする。しかし、上に立つ者が下の者に和やかに接し、下の者も上に立つ者に親しんで、穏やかに議論すれば、物事の理はおのずから明らかになり、何事もうまく行くのである」

 というところですね。まさにこの中に「穏やかに議論する」と(いう言葉が)入っていますが、この「議論」というのは、どういう意味になってくるわけですか。

賴住 そうですね。和というのは普通にイメージすると、空気を読んで人に合わせていく、自分を抑えていく、言いたいことも言わないで忖度するというようなイメージをとかく醸し出します。しかし、ここでいわれている和というのは決してそうではないということですね。

 和(調和)というものは、議論をすることによってものごとの理(道理)が自ずから見えてくる、そのことにより和が達成される、といわれています。(つまり)議論によって共同性が立ち上がってくるということがまずいわれていると思います。

 最初から共通のものが強固にあって、個々の人がそれに合わせていかなければいけない、自分を捨ててそこに合わせていかなければいけない、ということをいっているのではないのです。

 それぞれが自分の考えを虚心坦懐に言い、人の意見も聞く。その中で、自ずと道理が分かり、筋道が立ってくる。それが共同...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
〈続〉認知バイアス~その仕組みと可能性(1)概念のバイアス〈前編〉
非合理なのに誰もがハマる「概念のバイアス」とは
鈴木宏昭
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤