空海の真髄
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
空海の「宇宙・密教ミュージカル」が築いた日本文化の土台
空海の真髄(7)空海と密教ミュージカル
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『三教指帰』を世界最高の卒業論文と評価する鎌田氏は、立身出世の儒教も神仙思想の道教を拒否して、諸行無常・諸法無我の仏教を選ぶ空海には宇宙が投影しているという。そして、空海は、否定するのではなく、どんどんと止揚(アウフヘーベン)して止まない。空海の演じた密教ミュージカルこそが、その後の日本文化の土台を築いていったともいえる。理解の核心は、「詩の力」にあるのだ。詩を理解してこそ、空海の心を理解する扉の鍵は開くのである。(全7話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分32秒
収録日:2024年8月26日
追加日:2024年12月14日
≪全文≫

●『三教指帰』は世界最高の卒業論文


鎌田 『三教指帰』は世界最高の卒業論文だと、私は言いたい。

―― 卒業論文なのですか。

鎌田 だって大学を卒業していないですからね。中退でしょう。

―― なるほど。

鎌田 (それでは周囲の)みんなは納得しないのです。空海のおじは、親王(皇室の王子)の教育係のような役職を持っていた。そのように、官学で身を立てているおじが阿刀大足(あとのおおたり)という名で、空海への期待を象徴していました。

 だから、自分にとって漢文の大先生だったおじ、阿刀大足を納得させるために、「自分は仏道修行に邁進していくのだ」ということを宣言しなければならない。

 そのためには、おじさんも漢学者もびっくり仰天するほどの名文、説得力のある文章で示さなければならない。中途半端なものでは、「これでは駄目だ」とはねつけられる。だから、空海はおじを説得するために必死で書き上げたのだと私は思います。

 そこで、「なぜ儒教は駄目なのか」ということですが、三教を比べてみると、儒教が持っている世界のフレームワークはあまりに小さく、この世の原理にすぎない。でも、この世以外にも世界はあるだろう。あの世へいく前には仙人の世界がある。この世とは違う、この世離れした世界。けれど本当のところ、世界というものは迷いの中にある。どちらも迷いの世界であるのなら、真実の悟りの世界へはどうすれば至ることができるのか。


●立身出世を拒否して、諸行無常・諸法無我へ


鎌田 最初から儒教・道教・仏教の三教を否定しているわけではなく、三教の教えはみんな人々の疑いの心を取り除いてくれる知恵の教えだといっている。前のものを完全否定するのではなく、それぞれにいいところがあると。

 要するに、多様な中から選択するのだと。二者択一のような「あれか、これか」ではない。「あれもいいけれど、こちらのほうがよりいいよ」と。「あれもこれも」ではあっても、「このほうがもっと深いですよ」というような示し方です。多様な人々の生活や行動様式にしたがって、仏教の「医王(仏)」でいえば、さまざまな機根に応じて行う処方箋のように随機説法でいってくれるわけです。

 儒教は道徳、道教が神仙の教え、仏教は「諸行無常」と「諸法無我」を説いて、真実の世界のあり方、自分というものは...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤
老子の神髄(1)「絶対自由の境地」を求めて
『老子』が求める「絶対自由の境地」とは?…そして創造長寿へ
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(3)戦犯は児戯に類す――丸一陣地の死闘
「諸君、私を戦犯にするというが如きは児戯に類することである」
門田隆将
中国春秋戦国時代と始皇帝(7)始皇帝を支えた家臣たち
始皇帝を支えた家臣たち…史実からいかに実像を描いていくか
鶴間和幸
日本の財政の真実を検証する(6)「経済成長3つの源泉」の具体策
現代日本で「経済成長3つの源泉」の具体的プランを考えると?
宮本弘曉
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(5)キリスト教と反ユダヤ思想
ユダヤ人迫害を生んだ「権力者・ユダヤ人・民衆」の三者関係
鶴見太郎
編集部ラジオ2026(24)「皇室典範改正」を考える
【10minで考える】「皇室典範改正」社会の空気をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
老子の神髄(1)「絶対自由の境地」を求めて
『老子』が求める「絶対自由の境地」とは?…そして創造長寿へ
田口佳史
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(9)秀吉が作った公武統一政権と歴史のif
公武統一政権を作った秀吉の狙いとその歴史的意味
黒田基樹