空海の真髄
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『三教指帰』…儒教・道教を経て仏教に帰依する思想ドラマ
空海の真髄(6)『聾瞽指帰』と『三教指帰』
鎌田東二(京都大学名誉教授)
空海の重要な著作は24歳のときに著した『聾瞽指帰』であり、その序文やタイトル等を変更したものが『三教指帰』である。道を失った若者が三教(儒教、道教、仏教)と出会い、儒教・道教を経て仏教に目覚めていく戯曲風の著作に、空海が託したものは何か。今回は、その著作の最後に記された「十韻の詩」を読み解いていく。三教を比較する中で仏教の優位性を語る思想ドラマにおいて、主人公の姿は若き日の空海と重なっていく。(全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15分51秒
収録日:2024年8月26日
追加日:2024年12月7日
≪全文≫

●24歳のときに著した『聾瞽指帰』から『三教指帰』へ


―― 今(前回まで)の『秘蔵宝鑰』というのは、いってみれば(空海が)かなり年を経てから書いた(ということですね)。

鎌田 そうですね。最晩年ではなく、中期から後期に移行する頃の重要な著作になります。

── ではその原点がどこにあるかというのですか。

鎌田 その原点は、24歳のときに著した『聾瞽指帰(ろうこしいき)』というタイトルの書物で、国宝として高野山に所蔵されています。これが後に序文やタイトルが変わって『三教指帰(さんごうしいき)』になっていく。したがって、(空海の)原点は『三教指帰』にあるということになります。

―― これもやはり詩が非常に重要なメッセージを占めるわけですか。

鎌田 はい。

 これが、国宝『聾瞽指帰』の手稿です。『聾瞽指帰』のタイトルの後、「亀毛先生論」「虚亡隠士論」「仮名乞児論」「観無常賦」(かんむじょうふ)「生死海賦」(しょうじかいふ)とあります。国宝の冒頭にこの5行が書かれているのです。

 亀毛先生から仮名乞児(かめいこつじ)までは三教のことを書いています。最初の亀毛先生は儒教の先生、虚亡隠士は道教の先生、仮名乞児は仏教の仏僧、僧侶ということになる。その後の「観無常」は「無常を観る」という意味で、「賦」は詩の一つの形式です。つまり、無常を観る(観ずる、観想する)詩文ということです。次の「生死海賦」というのも、私たちが今いるのは生死の海の中であり、そこからどのように悟りの世界に入っていくのか、仏門の世界に入っていくのかが、詩でうたわれているのです。


●儒教・道教を経て仏教に帰依するストーリー


鎌田 ですから、国宝『聾瞽指帰』の最後は詩で終わる構成になっています。この詩がどのように展開するかというと、戯曲構造になっています。

 巻は上・中・下で、巻の上が儒教の「亀毛先生論」。巻の中は道教を論ずる「虚亡隠士論」、巻の下が仏教の「仮名乞児論」ですが、「仮名」は“けみょう”とも読めるので、“けみょうこつじ”かもしれません。

 話のあらすじとしては、まず蛭牙公子という不良青年がいる。そのおじの兎角公という人が、この不良少年をなんとか一人前にしたいと思い、修行によって心と身体、行動を立て直そうと企てる。そこで、いろいろな教えとして三教を教...

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