空海の真髄
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
詩で歌いあげる「心の十段階」…そして密教の核心へ
空海の真髄(5)偈と頌とお遍路の御詠歌
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『秘蔵宝鑰』の詩文は、インド映画で皆が踊るパッションと共通すると鎌田氏はいう。説明は端的に短く、最後に詩文を置くことで、歌い踊る場面を設定する。そうした詩による説明は手に取るように分かりやすく、クライマックスはドラマチックに歌い踊る。その精神は、お遍路で歌われる御詠歌にも継承されている。今回は、空海が示す「十の段階」ごとに掲げられた偈=詩文について学び、お遍路さんの御詠歌にもつながる「詩で歌う」流れを見ていく。(全7話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分28秒
収録日:2024年8月26日
追加日:2024年11月30日
≪全文≫

●『秘蔵宝鑰』のパトスに訴えかける手法はインド映画にもある


―― ここまでに『秘蔵宝鑰』の序文がいかに素晴らしいか。

鎌田 ドラマチックです。

―― ドラマチックにできているかということをお話しいただきました。これまでのお話では、『秘蔵宝鑰』自体は『十住心論』の十の段階を説明したものということでした。そして、そのそれぞれの段階に詩を入れているということなのですね。

鎌田 そうなのですね。そこが『秘密曼陀羅十住心論』という哲学書的な固いタイプのものと、『秘蔵宝鑰』の書き方の違いですね。つまり、一つひとつの意識の段階を説明するところに、漢詩で書いた「偈(げ)」「頌(じゅ)」という詩文がそれぞれに入っている。

 例えば、光源氏を主人公にした『源氏物語』には、700(~800)首ぐらいの歌がある。『古今和歌集』が1110(首)ぐらいですから、そこまでは至らないにしても、『源氏物語』の核心部分は歌になっているでしょう。地の部分の説明があり、一番心の部分は歌になっている。そういう歌の部分があることで、味わいとして胸に迫るものがあるわけですね。

 こういうパッションというかパトスに訴えかける手法というのは、われわれの大衆文学にも、インドの映画にもある。ある箇所になると急に歌になって、ワーッと…。

―― 踊り出すのがありますよね。

鎌田 踊り出す。まさにあれなのです。ある瞬間から踊りが始まっていて、そうなるとテンションが急に変わってしまうような感じ。それを、詩文で表現している。


●手に取るように分かる「十の段階」の詩文表現


鎌田 例えば第一の「異生羝羊心」も、性欲や食欲に執着する迷いの状況の中にあるわけなので、そこのところを説明する文章としては(次になります)。

 「凡夫は善悪に盲いて 因果あることを信ぜず”
 但し眼前の利を見る」

 目の前にある自分の利益、自分にとっていいこと、食欲であるとか性欲であるとかというものだけを見る。

 「何ぞ地獄の火を知らん」

 そういうところから、煩悩の迷いというようなものが生まれてくることが分かっているのだということ。

 「羞ずることなくして十悪を造り 空しく神我あると論ず
 執著して三界を愛す 誰か煩悩の鎖を脱れん」

 こういうふうにして、「異生羝羊心」という最初の段階が、執着...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(2)民意は本当に反映すべきか
デモクラシーとエリート主義の限界…立憲主義と共和主義
齋藤純一
独裁の世界史~ローマ編(2)見識を育んだ「父祖の威風」
ローマが見識を磨いていくために重視した「父祖の威風」
本村凌二
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威
フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威
山口芳裕
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎