おもしろき『法華経』の世界
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陀羅尼品…あらゆるものが暗号であり、メタファーである
おもしろき『法華経』の世界(6)「陀羅尼品」とエニグマ
哲学と生き方
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『法華経』下巻の「陀羅尼品」を読めば、それが真言宗の真言(=マントラ)と同様の構造を持っていることが分かる。天台教学における「諸法実相」や「本覚思想」という形而上学も、華厳経の「重々帝網」という次元世界も、全ては法華経に含まれるとも考えられるのである。「陀羅尼品」は、エニグマにように世界の暗号を解読するキーなのだ。(全10話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分16秒
収録日:2025年1月27日
追加日:2025年7月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●「陀羅尼品」が告げる写経や供養、説法の徳


鎌田 前回、「観世音菩薩普門品」では観音さまがいろいろなアバター、キャラクターで人々を救済する姿を具体的に見せるという話をしました。その次の章は「陀羅尼品」といいます。『法華経』下巻、「観世音菩薩普門品」第25の後、「陀羅尼品」第26という並びになっています。その「陀羅尼品」の冒頭を少し紹介いたします。

 〈その時、薬王菩薩は即ち座より起ちて偏に右の肩をあらわし、合掌し仏に向いたてまつりて、仏に申して曰く、「世尊よ、若し善男子・善女人の能く法華経を受持せばする者ありて、若しくは読誦して能く悟り、若しくは経巻を書写せは、幾ばくの福を得るや」と。〉

 このように質問するわけですね。すると、仏は次のように薬王菩薩に言います。

 〈仏は薬王菩薩に告げたもう「若し善男子・善女人ありて、八百万億那由他の恒河の沙(ごうがのしゃ)に等しき諸仏を──ガンジス川の砂ぐらいの数の諸仏がいる、菩薩ももちろんいるのです──供養せば、汝の意において云何ん。その得る所の福は、寧ろ為(こ)れ多しや、不や」と。
「甚だ多し、世尊よ」と。〉

 つまり、そのぐらいの仏を供養したらどうであろうか。得るところの幸福は大変なものかどうか。「それは大変な幸福でしょうよ」というふうになって、この後に続きます。

 〈「若し善男子・善女人にして、能く是の経において、乃至、一の四句偈をも受持し、読誦し、義を解り、説の如く修行せば、功徳甚だ多し」と。
 その時、薬王菩薩は、仏に白して言わく「世尊よ、われ今、当に説法者に陀羅尼呪を与えて、以って之を守護すべし」と。〉

 薬王菩薩が、仏の前で説法する者に「陀羅尼」を与え、陀羅尼を一つの方便にして救済していくと。陀羅尼というのは真言陀羅尼と言われているぐらいで、真言(=真実の言葉、仏の言葉)とほぼ同等の意味合い、力を持っているものです。

―― 真言というのは、仏を求めるマントラですね。

鎌田 マントラですね。仏の世界を表現する真実の言葉です。


●「陀羅尼」の功徳がつなぐ『法華経』と真言


鎌田 「陀羅尼」は「総持」とも訳されるのですが、真言とほぼ同じような意味合いを持っている。日本では「真言陀羅尼」のセットという言い方でいわれること...

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