おもしろき『法華経』の世界
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
遍歴とアバター…多様な仏、多様な菩薩が変容する面白さ
おもしろき『法華経』の世界(5)遍歴するアバター
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『銀河鉄道の夜』の著者・宮沢賢治にとってもそうだが、『法華経』の重要なテーマは「遍歴」であると考えられる。遍歴や修行の旅は、仏教的には方便を用いて悟りに向かうことだが、『大日経』住心品には悟りと大悲こそが究境として方便を生むという説もある。さらに『法華経』では、方便を駆使するためにアバター(化身)が大活躍する。アバターはインドの土着といえる思想だが、現代においても、あたかも。(全10話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分21秒
収録日:2025年1月27日
追加日:2025年6月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●宮沢賢治の『法華経』体験と「遍歴」


―― 以前、鎌田先生には宮沢賢治の講義もお願いしましたけれど(宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む・全6話)、宮沢賢治のお家は元々浄土宗でしたかね。

鎌田 浄土真宗の、確か大谷派だったと思います。

―― (彼は)『法華経』を読んだときに、あまりのイメージに圧倒されて、特に「如来寿量品」に圧倒されて法華経に変わったという話もありました。やはり、それに匹敵するようなイメージやスペクタクルが…。

鎌田 宮沢賢治の『法華経』体験は18歳ぐらいでした。彼は中学生の頃、15~16歳ぐらいから病気でした。肺を患っていたというので、肺尖カタルのような状態だったのでしょうか。盛岡の病院にいたときに島地大等が訳した『妙法蓮華経』を通して法華経に出会い、その生命思想に非常に感動したということがありました。その『法華経』体験が彼の『銀河鉄道の夜』までつながっているわけで、ある面で非常に似ていると思います。

 ただ、宮沢賢治の中では『銀河鉄道の夜』にはハレー彗星のイメージがあると、私は思っています。私の中では(法華経は)なんといっても『2001年宇宙の旅』なので、ハリウッド映画に惹かれた私と、宮沢賢治のもう少しオーソドックスな見方では(少し違いがある)。彼はのちに日蓮主義の国柱会に入っていきますので、より法華経に則したものとの違いは少しあるかもしれませんね。

―― なるほど。

鎌田 でも、『銀河鉄道の夜』を介すれば、共通点もかなりあります。彼らは遍歴していくではないですか。その遍歴の一つを木星の探索だと考えれば、『銀河鉄道の夜』はボーマン船長の(旅を含むもの)になります。

―― やはり、キーワードは「遍歴」ですか。

鎌田 キーワードは遍歴ですね。『華厳経』も遍歴です。(これは善財童子が)53の善知識(グル)たちをめぐっていく物語なので、どちらも遍歴です。旅、遍歴、修行の旅というのは、仏教でも(他の)宗教においても極めて重要なプロセスを成しますよね。


●「遍歴」と「方便」という究竟


鎌田 遍歴(旅)は、あらゆる英雄物語や、あらゆるイニシエーション(通過儀礼)に不可欠な要素です。ある知識や力を得るためのプロセスとしては、遍歴、旅、冒険というものが欠かせない。そこで出会う問題を解決して、より平和や幸福や、あるいは力を得たり発揮したりするということになりま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(4)トランプ大統領VS.中国
トランプ政権は実は与しやすい?…ディールで「時間稼ぎ」
垂秀夫