「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴史文学と時代小説の違いはどこにあるのかから始まり、きちんと史料を集めて読み抜くという流儀をお話しいただく。具体的にどうやって進めればいいのか。歴史好きなら特に知っていると大変役立つ文献史料の探し方、活かし方の基本とは。(2025年4月26日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全7話中第1話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
歴史の探り方、活かし方
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
中村彰彦(作家)
2.図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
2025年11月15日配信予定
3.ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
2025年11月21日配信予定
4.史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
2025年11月22日配信予定
4.史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
2025年11月22日配信予定
5.『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価
2025年11月28日配信予定
6.史料読解法…江戸時代の「全国の藩校ランキング」を探る
2025年11月29日配信予定
7.質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
2025年12月2日配信予定
時間:9分05秒
収録日:2025年4月26日
追加日:2025年11月14日
収録日:2025年4月26日
追加日:2025年11月14日
≪全文≫
●歴史文学と時代小説の違い
―― 皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。
中村 よろしくお願いします。
―― ありがとうございます。この講義は、中村彰彦先生のお話をお聞きする第1回目に当たります。今回のテーマは「歴史探索から考える…視点と分析」となっています。
中村先生は1949年、栃木県のお生まれでいらっしゃり、東北大学在学中に『風船ガムの海』で第34回文學界新人賞、佳作に入選されました。その後、文藝春秋で編集者を務められまして、1987年に『明治新選組』で第10回エンタテインメント小説大賞をご受賞。1991年より、執筆活動に専念されます。1993年に『五左衛門坂の敵討』で第1回中山義秀文学賞。1994年、『二つの山河』で第111回(1994年上半期)直木賞。それから、2005年に『落花は枝に還らずとも』で第24回新田次郎文学賞を受賞されています。
というところで、中村先生は資料を読み解いてお書きになる執筆スタイルで非常に名高い先生です。今日は、その見地から講義をいただきたいと思っています。中村先生、どうぞよろしくお願いいたします。
中村 よろしくお願いします。
―― では早速講義に入りたいと思います。まず先生、最初に「歴史の探り方、活かし方」ということで、歴史の史料にはいかに当たっていくかというところをお聞きしたいと思っています。その前に、「歴史は繰り返さないが、韻を踏む(マーク・トウェイン)」という言葉もあるようですが、先生は史料に当たることの意味をどのようにお考えでしょうか。
中村 特に歴史を材料にして小説を書く場合、大きく分けると、猿飛佐助が空を飛んでもいいといった「時代小説」の書き方と、歴史上で実際に起こったことを忠実に読み抜いて書いていく「歴史小説(文学)」の表現の二つに分かれると思います。
いわゆる時代小説は率直にいって通俗的なもので、書く方は金が儲かればいいし、読む方も暇つぶしになればいいという程度のものです。一方、歴史文学は人間の生き方、特に苦しかった人間の生き方を紙の上で看取ってあげたいというような思いから書かれていくものです。そのため、きちんと史料を集めて読み抜くという事前作業が必要になります。
史料を集めて読み、メモをし終えたところで、大体は自然に「この作品はどこから書き始め、どこで終わるのがいいか」ということも頭に入ります。そこまで行ってしまえ...
●歴史文学と時代小説の違い
―― 皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。
中村 よろしくお願いします。
―― ありがとうございます。この講義は、中村彰彦先生のお話をお聞きする第1回目に当たります。今回のテーマは「歴史探索から考える…視点と分析」となっています。
中村先生は1949年、栃木県のお生まれでいらっしゃり、東北大学在学中に『風船ガムの海』で第34回文學界新人賞、佳作に入選されました。その後、文藝春秋で編集者を務められまして、1987年に『明治新選組』で第10回エンタテインメント小説大賞をご受賞。1991年より、執筆活動に専念されます。1993年に『五左衛門坂の敵討』で第1回中山義秀文学賞。1994年、『二つの山河』で第111回(1994年上半期)直木賞。それから、2005年に『落花は枝に還らずとも』で第24回新田次郎文学賞を受賞されています。
というところで、中村先生は資料を読み解いてお書きになる執筆スタイルで非常に名高い先生です。今日は、その見地から講義をいただきたいと思っています。中村先生、どうぞよろしくお願いいたします。
中村 よろしくお願いします。
―― では早速講義に入りたいと思います。まず先生、最初に「歴史の探り方、活かし方」ということで、歴史の史料にはいかに当たっていくかというところをお聞きしたいと思っています。その前に、「歴史は繰り返さないが、韻を踏む(マーク・トウェイン)」という言葉もあるようですが、先生は史料に当たることの意味をどのようにお考えでしょうか。
中村 特に歴史を材料にして小説を書く場合、大きく分けると、猿飛佐助が空を飛んでもいいといった「時代小説」の書き方と、歴史上で実際に起こったことを忠実に読み抜いて書いていく「歴史小説(文学)」の表現の二つに分かれると思います。
いわゆる時代小説は率直にいって通俗的なもので、書く方は金が儲かればいいし、読む方も暇つぶしになればいいという程度のものです。一方、歴史文学は人間の生き方、特に苦しかった人間の生き方を紙の上で看取ってあげたいというような思いから書かれていくものです。そのため、きちんと史料を集めて読み抜くという事前作業が必要になります。
史料を集めて読み、メモをし終えたところで、大体は自然に「この作品はどこから書き始め、どこで終わるのがいいか」ということも頭に入ります。そこまで行ってしまえ...