『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
猪瀬直樹(作家/参議院議員)
猪瀬直樹氏が、自身が書いた『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』の現代的な意味について語る。1983年に出版された『昭和16年夏の敗戦』は、昭和16年当時に日本の若き俊英たちが、3~4年後の日本の敗戦を正確にシミュレーションしていたのに、それが活かされなかった悲劇を描き、ロングセラーとして大きな影響を与え続けている。また『昭和23年冬の暗号』は、東京裁判で戦犯として裁かれた東條英機たちが、あえて当時の皇太子殿下(現在の上皇陛下)の誕生日に戦犯を処刑された内幕に迫り、「歴史的存在」としての人間の姿を描き出した。この2冊は、現代日本人に何を訴えかけるのか。
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分52秒
収録日:2021年6月25日
追加日:2021年7月20日
≪全文≫

●30代半ばに執筆した『昭和16年夏の敗戦』


―― みなさま、こんにちは。本日は猪瀬直樹先生に『昭和16年夏の敗戦』、そして『昭和23年冬の暗号』、この2冊についてお話をうかがいたいと思います。では先生、どうぞよろしくお願いいたします。

猪瀬 よろしくお願いします。

―― 『昭和16年夏の敗戦』は、先生が作家としてご活動されてから相当早い時期にお書きになったものですね。

猪瀬 『天皇の影法師』という本と『昭和16年夏の敗戦』を35歳ぐらいのときに書いたんですね。30代の半ばだったその頃、日本の近代社会の成り立ちはどうなっていたのか、またそこからどういう未来が見えるのか、ということを思っていたので、『天皇の影法師』と『昭和16年夏の敗戦』を書いたのです。

 『天皇の影法師』は、いずれ昭和天皇が亡くなるが、そのときに元号はどうやってつくるのか。その前に、元号をつくった人は誰だったのか。それを調べると、森鴎外という名前が出てくる。そうすると、それは文学の課題としてどうだったのか、ということを見てみる必要があったのですね。

 一方、『昭和16年夏の敗戦』については、ちょうどこの昭和16年の夏に「総力戦研究所」ができて、何をやるかということになったときに、ここに(研究生として)集められた30歳から36歳の35人の人たちが模擬内閣をつくり、36歳の最年長者が総理大臣になって、大蔵大臣や陸軍大臣、商工大臣(現・経産大臣)、農水大臣などの役を各自が担当します。

 「役」といっても演劇としてやるわけではなく、それぞれの出身官庁に行く。メンバーのなかには日本製鐵や日本郵船、同盟通信(現・共同通信)などの民間出身者もいるので、彼らは、自分たちの出身官庁や出身の会社に行って、そこにある資料を持ってくるのです。それを互いにつき合わせながら「もしアメリカと戦争をしたら、どうなるか」のシミュレーションをしたのです。

 シミュレーションにおける一番のポイントは何か。ハワイのパールハーバー(攻撃)という作戦がありましたが、なぜそれをやるのかという元をたどると、アメリカが太平洋に入ってこないように、ということで、当時、作戦が組み立てられたわけです。

 なぜそうなるかというと、インドネシアには石油がある。掘削して運べばいい。当時の日本は「ABCD包囲網(※ABCDはアメリカ、イギリス、中国、オランダの頭文字)」によって...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(2)戦争省とチャーリー・カーク暗殺事件
チャーリー・カーク暗殺事件とは?その真相と政権への影響
東秀敏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保