石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿
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価値紊乱者たれ…「生命的な実感」の重視と旧世代への反逆
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(3)価値紊乱者・石原慎太郎と戦後派の時代
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
『太陽の季節』で芥川賞作家となった石原慎太郎が好んで使用した言葉に「価値紊乱」がある。これは単に価値を乱す(壊す)だけでなく、その先に新しい価値を創造するというもの。石原慎太郎の小説や政治に見られる、当時のオールドジェネレーションに見られた敗戦国としての振る舞いや考え方を排し、新しい価値を生み出そうとした背景や姿勢に迫る。(全9話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分11秒
収録日:2022年3月18日
追加日:2022年6月22日
≪全文≫

●「価値紊乱」という言葉を好んで使った芥川賞作家・石原慎太郎


―― 石原慎太郎さんの政治スタイルや政治哲学は、どのようなところから生まれて、どういった論理だったのかをお聞きしたいと思います。

 もともと片山先生が注目されたのは「価値紊乱者=価値を乱す者」としての石原慎太郎で、そもそも登場のときがそうだったということです。皆さんがご存じのように、『太陽の季節』という小説で華々しくデビューし、一躍スターになっていく。この時代の価値紊乱者とは、どのような意味合いがあったのでしょうか。

片山 『太陽の季節』で芥川賞を取り、石原慎太郎さんの作家としてのスタンスを求められるとき、つまり評論的、エッセイ的なスタイルで原稿を求められたときに、「価値紊乱」という言葉を石原慎太郎さんは好んで使いました。「価値紊乱から価値を創造することが大事だ」というものです。単にぶち壊す、あるいは「今、皆がとりあえず保っているものを乱していくという価値紊乱だけを行って、後のことは知らないよ」ではなく、価値紊乱をし続けることによってわれわれの世代(戦後派)の、新しい時代に見合った価値観が生まれるのだというのです。

 とりあえずは、皆が信じている価値だったり、実は信じていないけれども取り繕ったりしているものを、壊せるだけ壊してしまう。極端な言い方をすれば、戦前の井上日召などといった人たちの、「とにかく破壊だ。まずぶち壊すことによって覚醒すると、次が出てくるのだ」というロジックです。およそどこの国でも比較的、社会が乱れているときは、そういったことを言う人が現れます。


●理論や観念よりも、生活の実感を重視


片山 でも石原慎太郎さんの場合はそれとは違います。「もはや戦後ではない」という声が出てくるように、日本はアメリカに占領されていた時代から独立を回復し、曲がりなりにもこれから一流の国家として(蘇るのかどうかはまだ分からないけれども)、朝鮮戦争後の経済の回復も徐々に数字に表れてきた段階です。そういった中で、日本の国際的な地位を、ソビエトに対してもアメリカに対しても、政治手法はいろいろと違い自民党の中での対立を生んではいきますが、とにかく世界に対して主張していこうとする。

 しかし、これからまともになっていくかもしれないという中で、古いジェネレーションである戦前戦中に顔役であった人たちが生...

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