石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
価値紊乱者たれ…「生命的な実感」の重視と旧世代への反逆
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(3)価値紊乱者・石原慎太郎と戦後派の時代
芸術と文化
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
『太陽の季節』で芥川賞作家となった石原慎太郎が好んで使用した言葉に「価値紊乱」がある。これは単に価値を乱す(壊す)だけでなく、その先に新しい価値を創造するというもの。石原慎太郎の小説や政治に見られる、当時のオールドジェネレーションに見られた敗戦国としての振る舞いや考え方を排し、新しい価値を生み出そうとした背景や姿勢に迫る。(全9話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分11秒
収録日:2022年3月18日
追加日:2022年6月22日
≪全文≫

●「価値紊乱」という言葉を好んで使った芥川賞作家・石原慎太郎


―― 石原慎太郎さんの政治スタイルや政治哲学は、どのようなところから生まれて、どういった論理だったのかをお聞きしたいと思います。

 もともと片山先生が注目されたのは「価値紊乱者=価値を乱す者」としての石原慎太郎で、そもそも登場のときがそうだったということです。皆さんがご存じのように、『太陽の季節』という小説で華々しくデビューし、一躍スターになっていく。この時代の価値紊乱者とは、どのような意味合いがあったのでしょうか。

片山 『太陽の季節』で芥川賞を取り、石原慎太郎さんの作家としてのスタンスを求められるとき、つまり評論的、エッセイ的なスタイルで原稿を求められたときに、「価値紊乱」という言葉を石原慎太郎さんは好んで使いました。「価値紊乱から価値を創造することが大事だ」というものです。単にぶち壊す、あるいは「今、皆がとりあえず保っているものを乱していくという価値紊乱だけを行って、後のことは知らないよ」ではなく、価値紊乱をし続けることによってわれわれの世代(戦後派)の、新しい時代に見合った価値観が生まれるのだというのです。

 とりあえずは、皆が信じている価値だったり、実は信じていないけれども取り繕ったりしているものを、壊せるだけ壊してしまう。極端な言い方をすれば、戦前の井上日召などといった人たちの、「とにかく破壊だ。まずぶち壊すことによって覚醒すると、次が出てくるのだ」というロジックです。およそどこの国でも比較的、社会が乱れているときは、そういったことを言う人が現れます。


●理論や観念よりも、生活の実感を重視


片山 でも石原慎太郎さんの場合はそれとは違います。「もはや戦後ではない」という声が出てくるように、日本はアメリカに占領されていた時代から独立を回復し、曲がりなりにもこれから一流の国家として(蘇るのかどうかはまだ分からないけれども)、朝鮮戦争後の経済の回復も徐々に数字に表れてきた段階です。そういった中で、日本の国際的な地位を、ソビエトに対してもアメリカに対しても、政治手法はいろいろと違い自民党の中での対立を生んではいきますが、とにかく世界に対して主張していこうとする。

 しかし、これからまともになっていくかもしれないという中で、古いジェネレーションである戦前戦中に顔役であった人たちが生...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠

人気の講義ランキングTOP10
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
「集権と分権」から考える日本の核心(7)人間の性と今後の「集権と分権」
ロシアを見れば明らか…正義を唱えても優るのは人間の性
片山杜秀
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
未来を知るための宇宙開発の歴史(11)地球にない宇宙資源を活用する時代へ
月で生活できる!? 地球では入手困難な宇宙資源の獲得へ
川口淳一郎
編集部ラジオ2025(22)長谷川眞理子先生の「子育て」講義
生物学からわかる「ヒトの配偶や子育て」で大切なこと
テンミニッツ・アカデミー編集部
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(5)現代社会の問題点と親性脳のスイッチ
親も子もみんな幸せになる方法…鍵は親性脳のスイッチ
長谷川眞理子
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑