もののあはれと日本の道徳・倫理
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「なあなあ」と自粛警察…大和魂と漢才の対から見えるもの
もののあはれと日本の道徳・倫理(4)「なあなあ」の日本ともののあわれ
板東洋介(東京大学大学院人文社会系研究科 准教授)
日本は「なあなあ」でいい――本居宣長は、人それぞれにある切実な「あはれ」に共感し、不道徳な思いをある程度許容することが日本的な道徳であると説いたが、今回取り上げる考え方がこの「なあなあ」である。表立ったルールではなく、なんとなくその場の人間的な度量、あるいは空気で丸く収めて回していくという発想もあり得るということだが、具体的にはどういうことなのか。最終話の今回は、「もののあはれ」の共感性を重視する日本の特異な道徳観を総括し、諸外国の道徳観を理解する視座を提示する。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分13秒
収録日:2023年8月4日
追加日:2024年2月8日
≪全文≫

●日本は「なあなあ」で社会を回していく


―― そのような感覚の中で、日本においては「なあなあ」でいいという、大変面白い提起が出てまいりますけれども、そういうものなのですか。

板東 宣長的なプランを採用すると、要するに1人ひとりのメンバーがどうしても規範、理念、原理からずれるわけです。本当はやってはいけないけれども、どうしてもやりたいのだという思いがあるのです。

―― みんなそれは共感をもって理解するわけですよね。

板東 そうです。それはある程度まで許すということです。そのような思いを持つことまでは許して、ちょっとはみ出してしまったことくらいはこっそり許すわけです。やらかし過ぎたら、もうダメですよと切りますけれども、ある程度は「なあなあ」でやるのです。

 だから、会社とか、学校とか、あらゆる集団できちっとルールを明文化して、全員がそのルールを遵守することで共同体を回すというガバナンスはあり得ると思うのです。

 でも、もう一方で、別の運営の仕方もあって、なんとなくルールは適当というか、成文化するとそれは拘束力を持ちますから、あまり成文化しないようにして、ある程度人間関係の中でいざこざとか、逸脱はあるものだと考える。いくつかはそういう問題が起きるけれども、それを表立ったルールではなくて、なんとなくその場の人間的な度量とか、空気で丸く収めて、回していくという発想もあり得るわけであって、国学者が考えたのは、日本はその後者の発想で回してきたのだということです。

 ルールをはっきり「仁義礼智」だと決めてしまうと、「あなたはここからずれた」という形で、酷薄にそのずれた人を断罪せざるを得ないから、なんとなく(ルールは)あるのだけれども、それを言わず「なあなあ」で、もちろんちょっとした逸脱は常にあり得るわけです。光源氏みたいに人妻を奪ってしまったとか、どうしてもやりたくなって反逆してしまったとか、それが行きすぎたらきちっと止めるけれども、ある程度まではどうしても人間の情の自然だから仕方がないという形で回してきたのが日本だというのが国学者の理解です。

―― よく社会契約論ですとか、いろいろな発想がありますけれども、あれも一種のフィクションとしての社会契約ということになりますけれども、ちょうど先生がここでおっしゃったのは、日本と...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
世界の語り方、日本の語り方(1)なぜ「語り方」なのか
今後身に付けるべき知性として「新しい語り方」を考える
中島隆博
プラトンの哲学を読む(1)対話篇という形式の哲学
ヨーロッパ哲学の伝統はプラトン哲学の脚注だ
納富信留
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(24)「皇室典範改正」を考える
【10minで考える】「皇室典範改正」社会の空気をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
天皇のあり方と近代日本(4)三島由紀夫VS東大全共闘
「人間天皇」を否定した三島由紀夫の思想が問うものとは
片山杜秀
日本の財政の真実を検証する(5)財政政策で経済は成長するか
どうすれば経済成長できるのか…財政政策の可能性と限界とは?
宮本弘曉
老子の神髄(7)『老子道徳経』「去用第四十」
緊張や怒りをコントロールするには?老子に学ぶ精神と肉体の関係
田口佳史
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(2)在留邦人の生命財産を保護する決断
武装解除の「厳命」を守るか、戦って在留邦人の「生命」を守るか
門田隆将
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(2)大規模言語モデルが孕む問題
AIは頭のないオウム?…AIがAIを引用する世界に創造性はあるか?
橋爪大三郎
中国春秋戦国時代と始皇帝(5)孝公・恵文王の時代と商鞅の変法
秦はいかに強大な国になったのか…「商鞅の変法」でどう改革したか
鶴間和幸