もののあはれと日本の道徳・倫理
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「なあなあ」と自粛警察…大和魂と漢才の対から見えるもの
もののあはれと日本の道徳・倫理(4)「なあなあ」の日本ともののあわれ
哲学と生き方
板東洋介(東京大学大学院人文社会系研究科 准教授)
日本は「なあなあ」でいい――本居宣長は、人それぞれにある切実な「あはれ」に共感し、不道徳な思いをある程度許容することが日本的な道徳であると説いたが、今回取り上げる考え方がこの「なあなあ」である。表立ったルールではなく、なんとなくその場の人間的な度量、あるいは空気で丸く収めて回していくという発想もあり得るということだが、具体的にはどういうことなのか。最終話の今回は、「もののあはれ」の共感性を重視する日本の特異な道徳観を総括し、諸外国の道徳観を理解する視座を提示する。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分13秒
収録日:2023年8月4日
追加日:2024年2月8日
≪全文≫

●日本は「なあなあ」で社会を回していく


―― そのような感覚の中で、日本においては「なあなあ」でいいという、大変面白い提起が出てまいりますけれども、そういうものなのですか。

板東 宣長的なプランを採用すると、要するに1人ひとりのメンバーがどうしても規範、理念、原理からずれるわけです。本当はやってはいけないけれども、どうしてもやりたいのだという思いがあるのです。

―― みんなそれは共感をもって理解するわけですよね。

板東 そうです。それはある程度まで許すということです。そのような思いを持つことまでは許して、ちょっとはみ出してしまったことくらいはこっそり許すわけです。やらかし過ぎたら、もうダメですよと切りますけれども、ある程度は「なあなあ」でやるのです。

 だから、会社とか、学校とか、あらゆる集団できちっとルールを明文化して、全員がそのルールを遵守することで共同体を回すというガバナンスはあり得ると思うのです。

 でも、もう一方で、別の運営の仕方もあって、なんとなくルールは適当というか、成文化するとそれは拘束力を持ちますから、あまり成文化しないようにして、ある程度人間関係の中でいざこざとか、逸脱はあるものだと考える。いくつかはそういう問題が起きるけれども、それを表立ったルールではなくて、なんとなくその場の人間的な度量とか、空気で丸く収めて、回していくという発想もあり得るわけであって、国学者が考えたのは、日本はその後者の発想で回してきたのだということです。

 ルールをはっきり「仁義礼智」だと決めてしまうと、「あなたはここからずれた」という形で、酷薄にそのずれた人を断罪せざるを得ないから、なんとなく(ルールは)あるのだけれども、それを言わず「なあなあ」で、もちろんちょっとした逸脱は常にあり得るわけです。光源氏みたいに人妻を奪ってしまったとか、どうしてもやりたくなって反逆してしまったとか、それが行きすぎたらきちっと止めるけれども、ある程度まではどうしても人間の情の自然だから仕方がないという形で回してきたのが日本だというのが国学者の理解です。

―― よく社会契約論ですとか、いろいろな発想がありますけれども、あれも一種のフィクションとしての社会契約ということになりますけれども、ちょうど先生がここでおっしゃったのは、日本と...

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