『タテ社会の人間関係』と文明論
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本人は分業がヘタクソ!? ワン・セット主義の是非を問う
『タテ社会の人間関係』と文明論(3)日本型の競争原理とワン・セット主義
「日本人は分業するのがヘタクソである」――『タテ社会の人間関係』が書かれた戦後の高度経済成長期、日本型の競争原理はうまくいっていたのだが、半世紀以上たち、グローバル化した現代社会でそれが行き詰っている要因について、そう考える與那覇氏。その背景にあるのはワン・セット主義ではないか。どういうことなのか。日本社会のアウトソーシングしない生き方について考えていく。(全8話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分43秒
収録日:2024年5月27日
追加日:2024年8月22日
≪全文≫

●日本人のヘタクソな分業とワン・セット主義


與那覇 このあたりは、呉座さんとしてはどのような感じで読まれましたか。

呉座 この『教養としての文明論』でも議論しましたけれど、やはり場の、ある程度の開放性というか、新しい人材、実力のある人を入れていかないと、組織としてやっていけないという側面はどんな社会でもあります。

 中国とかの場合だと、すごく広い血縁ネットワークがあり、その血縁ネットワークの中で一番優秀な人に集中投資して、その秀才に賭けるというような方向になっていくわけですが、日本の場合は、婿養子みたいな形で優秀な人を取っていきます。

 これは中根さんも書いていたと思いますけれど、だから江戸時代の商売をやっているような家などは、長男がボンクラだと、これでは店が潰れる、家が潰れるということで、娘を優秀な番頭と結婚させて、婿養子にしてつなげるわけです。

 ですから、そういう形を取って、ある程度開放性を持つことで、新しい人材を取り入れて、実力主義をちょっと導入することで、なんとか組織の新陳代謝を行っていくという側面があります。そのやり方が社会によって違う。中国だったら広い血縁ネットワーク、日本だとそういう婿養子などの形で、新しく場に迎え入れるという形ですね。

與那覇 その結果として、どのような社会もその社会なりに、いわゆる能力主義とか、競争みたいなものに適応していくのですが、日本はやはり社会のあり方自体が他と違いますから、独特の能力主義、独特の競争になっていくということですね。

 この本(『タテ社会の人間関係』)が書かれたのは1967年で、まさに高度成長まっしぐら、真っ盛りなところだったわけですけれど、この日本型の競争原理でやっていってうまくいく時代もあるし、逆にちょっと行き詰る時代というものも出てきます。それで、すごいなと思うのは、中根さんのこの本は1967年なのですが、このまま行くと行き詰るのではないかということを見通しているようなところがあります。

呉座 そうですね。

與那覇 そのあり方の1つが、日本人は分業するのがヘタクソであるという話です。つまり、それこそカースト制度のように、例えば「俺はこれをやる仕事に属しているんだ」「おまえらはこっちをやる仕事に属しているんだ」というように分かれていると、「それぞれベストなパフォーマンスで、違う分野でがん...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓