真山仁の社会論
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
関西の東京化は、地方全体の問題である
真山仁の社会論(2)東京の没個性化と関西の東京化
真山仁(小説家)
東京では言葉が漂白され、個性を出さず競争をしなくなっている。一方、関西の東京化が進んでいると、小説家・真山仁氏は考える。それはいったいどういうことか。関西出身で現在も関西に住む真山氏に、関西と東京の現在について語っていただいた。(全3話中第2話)
時間:7分03秒
収録日:2018年4月10日
追加日:2018年8月6日
≪全文≫

●今の東京は言葉が漂白され、個性が消えている


―― 東京は快適・安全・清潔な街になりましたが、結果として競争力を失い、ものを考えない人たちの集団になってしまったのは皮肉ですね。

真山 そうですね。とは言え、東京は地方より競争しています。通勤電車の1カ月の定期券を買うにも並びますし、ラーメン1杯食べるためにも並んでいるわけですから、ある種の競争はしているのです。ただし、生存競争をする必要はなくなっています。逆に、目立たないようにする努力というのでしょうか、そうしたものはあります。私は関西で生まれ育ったので、東京に来た時、言葉が漂白されているなと思いました。

 言葉を聞いても、その人の出身はまず分かりません。でも大阪なら、「おまえ、京都やろ」、「おまえ、大阪やんな」「河内やろ、自分」という具合で、語尾や言葉遣い一つで、関西の中でも、すぐに出身が分かります。しかもそれでキャラクターまでできてしまうのです。それに対して東京生まれといっても、「江戸っ子だい」と会社の会議室で言うような人はほとんどいません。基本的にはNHKのアナウンサーと変わらない言葉を使っています。これは没個性です。ある意味、日本語としての標準語の漂白感は、「この大都会では競争しないでください」「できれば個性は出さないでください」「個性を出すなら、おうちに帰って1人になってからにしてください」という考えが染み付いているからではないでしょうか。

 今の東京は非常に人工的で、競争せずに豊かなものだけを取り入れ、お互いの出自を見せないことでバランスを取っているようなところがあるのだろうと思います。

 だから特に目立つのは、私もそうですが、関西人が東京で関西弁を使いにくくなっているということです。逆にいえば、東京の人は関西弁に興味を示します。昔聞いた話ですが、大阪環状線という東京の山手線のような路線で、「東京から来た人が電車から降りない」と言うのです。「どうしてか」と聞いたら、「電車に乗っていると、女子高生や男子高生の喋っている話が漫才を聴いているようで面白いから乗り続けていたくなるらしい」と言うわけです。ただ、かつてはそれぐらい関西弁が飛び交っていたのに、最近ではそういうことも減ってきました。


●関西の東京化が日本を弱くしている要因か


真山 東京とは違う強みを芯に持っていた関西の個性が薄らいできて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫