『タテ社会の人間関係』と文明論
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『東京物語』原節子が象徴的!? 場による日本の人間関係
『タテ社会の人間関係』と文明論(2)場から日本社会を動かすダイナミクス
哲学と生き方
日本とインドの社会構造は対極の位置にあるというのが『タテ社会の人間関係』での中根氏による分析である。日本の「タテ社会」は場を重視し、例えば移民や転出者が帰国するとよそ者扱いされるのに対し、インドや中国、イギリスなどの「ヨコ社会」は資格を重視して、場所に関係なく仲間意識が継続する。第2回の講義では、特に場の日本と資格のインドについて、より詳しく考察し、日本の特殊性とは何かを明らかにしていく。(全8話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分15秒
収録日:2024年5月27日
追加日:2024年8月15日
≪全文≫

●1回でも抜けるとよそ者になってしまう日本社会


―― 與那覇先生の問題提起で、資格というものが読んで少し分かりづらいかなというところもありましたけれど、イメージとして階級・階層というほうは比較的分かりやすいのでしょうか。インドの場合だと、例えばカースト制があります。イギリスの対比とかでもそうだったのですが、イギリスであれば、教授になって教授仲間になると、初めてファーストネームで呼べるけれど、学生では呼べないわけですね。

 あと例として挙がったのが、海外ですと職能別の組合があって、旋盤工だったら旋盤工の組合があったり、日本だと企業内組合とか産業別組合とかになるので、ちょっと論理が違いますというような話がありましたけれど、ある意味でその資格というのは、そういう同類の集まりとかというイメージですか。どういうことが一番近いですか。

與那覇 おそらく階級といってしまうと、富で「収入は何円なんですか」で分かれるというイメージが今は強いので、階級とも関係はありますが、ちょっと違うのかなと。歴史研究の観点からいうと、身分と呼ばれるものにむしろ近いのではないですか。

呉座 そうですね。ですから、いったん手にした立場みたいなものが、どこかに移ったとしても、それがずっと続くというところがたぶん一番大きな特徴なのかなと思っています。日本の場合、1回場を離れてしまうと、もうそのメンバーシップではなくなってしまいます。

 しかし、いわゆる資格といわれているものは、どこへ行ったとしても、(基本的に)それは変わらないわけですね。ですから、遠くに行ってしまったとしても、仲間意識は変わらないという、ここがやはり一番大きいところなのではないですかね。離れたらもう無効になってしまうのと、離れたとしても、どこへ行ったとしても、(基本的に)ずっと有効なものという、そこが大きな違いなのかなと思います。

與那覇 「ステータス」という言い方が分かりやすいかもしれないですね。

呉座 ステータスに近いかもしれませんね。ですから、(『タテ社会の人間関係』の)61ページのところで面白いなと思ったのが、「いったん離れて、戻ってきても、ダメ」というところがすごく面白くて……。

與那覇 これは、「日本では」ということですね。

呉座 そうそう。日本ではということで、日本では移民が帰ってきても、すごくよそよそしく...

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